『在日徒然抄』 (8) 鄭 煥麒 名誉顧問
   
ざいにちつれづれしょう
在日徒然抄
河出書房新社
初版発行
2002年 10月10日
インターネットで結婚

私の孫娘、麻美は、2年前に県立大学を卒業して、名古屋で塾の英語の教師をしていたが、
かねて希望していたアメリカのコロンビア大学3年の編入試験に合格し、留学することになった。

その頃、彼女はインターネット上のチャット(インターネットでの複数相手の会話)で
互いに情報や資料交換、研究などをしていた。そのなかのアジアン・サークルに李君がいた。
麻美が李君に「卒業した大学は」と訊ねると、「大学で人を評価するのか」と出身校を答えなかった。
麻美はそんな李君のことを母親に話した。 
彼は在米2世で、両親は1960年代に米国に移住し、現在シアトルに住んでいる。

麻美は李君からニューヨークに行く途中、ぜひシアトルに立ち寄ってほしいと請われた。
麻美は母親にそのことを話し、アメリカへの同行を求めた。彼はすらりとした好感のもてそうな青年で
第一印象はよかったそうだ。アメリカの有名校ハーバード大学を卒業し、現在サンフランシスコで一流会社に勤務している。

麻美は彼のことを、祖父母の私たちに報告にきた。両親はお互いの親の承諾を得たら、
麻美の卒業を待って、結婚することを約束したようだ。麻美は「インターネットで、最初はペンネームで話しました。
気取ることもなく本心で話せるので、相手の人間性がわかるの・・・・・。
親戚や知人の紹介じゃないから、義理立てすることもないし、フランクに話すことがせきました。
インターネットの効用でしょうか」と言う。

私は、Y氏の娘がインターネットで結ばれた話はまったく他人事のように思っていた。
それが2年後に、まさか自 分の孫娘がA氏の娘とまったく同じパターンで、結婚の約束をするまでになったとは、
今もって信じられない出来事である。

麻美から、このいきさつを聞いていた家内が、突然、私に向かって「これからはインターネットを覚えなければ、
時代に取り残される」と言い出したのにはびっく りした。明日からインターネットを習うつもりだと力む。
私は家内に70の手習いは結構なことだが、コンピュターを使いこなすようになるには、
それこそ天変 地異でも起こらないかぎり無理なことだと言った。(文化と文明から)