第11回 「定規」


定規 ○月●日 天気 快晴 暑い

 久しぶりに復活の「楽描き」である。前回からちょっと時間が経ってしまい、その間に私の状況もすっかり様変わりしてしまったので今回は近況報告とさせて頂く。決してネタが切れた、などとはゆめゆめ思われないように。
 大学はこの春をもって無事卒業した。皆さんご存知の通り職にはありつけなかったので、このまま大学に居残っても良かったのだが(というか、本当に居残ってしまいそうになった)、ある理由によりそれはやめた。大体せっかく卒論を出したのに留年したら来年また提出し直さなくてはならない(最初から出さなければ良かったのかも知れないが、どうしてもある先生の評価が欲しかったし、その先生は4月から1年間ドイツへ行ってしまわれることが判っていたので提出せざるをえなかったのだ)。そんな面倒なことは嫌だ。あまり居残りたくなるような大学でもなかったし。
 で、卒業後の現在の身分は……呆れた事にまだ学生している。別に就職浪人の学校ではなく、情報系の専門学校である(ここに行きたいってのが上に書いた大学に残らなかった理由)。そこでビデオやCGなど、デジタル映像一般を学んでいる。業務用のビデオカメラを構えて作品を創ったり、ワークステーションの前に座って3DCGを描いたり……学科の名前が「CG映像科」というだけあってCGが中心ではあるが、去年までは実写が中心の学科だったのでコンピュータの前に座りっぱなし、というわけでもない。他の学生はどう思ってるのか知らないが(何でCGやりに来たのに実写なんかやるんだ! という学生は結構いる)、とりあえず私はそういうところが凄く面白いと思っている。
 何しろ(文系の)大学とは何もかもが違う。大学の授業はある種ルーチンワーク的な部分があったが、実写の授業はかなり学生自身の判断が要求される。一日中撮影の日など、授業時間通りに進んだりしない。自分達で適当な時間に休憩を入れたり、昼食を摂ったり、逆に昼休みでも時間が無ければぶっ続けで撮影したりもする。すべて学生自身が判断しなければならない。こういった点はとても新鮮で、ヘンな事が好きな私としては毎日が実に楽しい次第である。
 しかし、ルーチンワークではないが故の難しさというのもある。クラスの大半は(当たり前だが)10代の学生が殆どで(ちなみにクラスは60人、その内20人くらい韓国からの留学生がいる。最初は驚いたけど今は別に外国人だからと言ってどうという事もない。付き合ってみりゃ韓国人だろーが日本人だろーが、言葉と国籍が違うだけでみな同じだ)、困った事に「将来の自分の職業に関わる事を学んでいる」という自覚が出来ている人が少ないのだ(そう見えるだけかもしれないが)。私も大学1、2年の頃(いや、下手をすると卒業するまで)は似たような状況にいたから判るが、大学と違ってこちらは2年間しかない。その短い時間の間に一気に必要な知識を詰め込まれるわけだから、自覚が出来る前に学校が終わってしまう危険性すらありえる。まして実習は上記の通り学生の自主性に任せられるから、だらけようと思えばいくらでもだらけられるのである。
 まあでも、私も好きだからこういう授業を熱心に受けているが、つまらない授業だったら熱心にはならないだろうし……しかし、そうすると熱心に授業を受けてない奴は何でこないな学校に来たんだろう? うーむ、ナゾだ。

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