第9回 「カッター」


カッター ○月●日 天気 どしゃ降り

 ところで前回の修正液だがしのら大先生自ら「LIONのミズノンだよーん」とのツッコミがあった。あんな細かいとこまでみているとは、あなどれない人である。うーむ。

 私が絵を描き始めたのは中学生の頃からだからそろそろ10年近く続けている事になる。長い事やっていれば当然テクニックも覚えるし、絵柄も変わる。描き出した当時と現在とではかなりの変化を遂げてきた。そしてもちろん、今後も変わり続ける。(変わって欲しい)
 変化の原動力は「不満」である。今よりもっと上手くなりたい、という不満だ。それは常に私の中にくすぶっている。
「どうして俺はこんなに下手くそなんだー!!」
 私の絵を評価してくれる人々が「昔より格段に良くなったよ」「今回の絵、迫力あったねえ」などと褒めてくれることもあるが、絵描きというのは因果なもので、他人の肯定より自分の否定を優先するのである。たとえ褒めてもらえた作品であっても、自分で気に入らなければそれまで。ましてや他人からも否定された時など、天の岩戸に閉じ込もりたいぐらいだ。
 描けば描く程に、不満は溜まっていく。時には描く事さえ放り出してしまいたくなるほどである。ところが、そんな不満がある時、なにかをキッカケに解消される事がある。
 キッカケは誰かからの指摘(それも言った本人はさほどの意識がない場合が多い)や、他人の絵を見ていてふと気づいたというように、何でもないことである。その些細な出来事が、目前の、どうしても抜け出せなかった暗闇をばっさりと切り開く。個人レベルの革命と言ってもいい。これは恐ろしいほどの快感である。
 絵を描くのは知識ではない。テクニックや描く対象を「知っている」ことは何の関係もない。理屈抜きで「体感」することが大事なのだ。(何もイラストに限らず、想像するということは全てそうではないだろうか)
 だから私は、下手であろうがなんであろうが(性懲りもなく)これからも描き続ける。あの麻薬のような快感を、もう一度味わうために。

第8回
第10回



戻
前のページに戻る
トップページに戻る