第8回 「修正液」


修正液 ○月●日 天気 曇り 少し寒い

 ぴーちから葉書が来た。
「(前略)……さて今回の作戦を伝える。Gのイラストの発注じゃ。(とびら)B4の1/3横長を一枚至急書いてくれい。まあ内容は予告編にあったようなものでかまわん! ……(後略)」
 ……イラストの指定なんていつもこんなもんである。
 文章を見てから描けるケースは殆ど無い。あったとすればそれは前号での掲載に間に合わなかった原稿である。
(以前、一度だけ本文作成とイラスト描きが同時進行で行われた事があったがこんなのは例外中の例外と見なすべきである。もっとも、何か疑問が浮かべば即その場で打ち合わせが出来、文章やイラストに反映できるという点においては、確かに最高の環境であったが)
 そういうわけだから毎号来る度にまず最初に自分が描いたイラストの載っているゲームを読んでしまう。イラストが綺麗に印刷に出ているか、という事もあるがそれよりも恐ろしいのは「内容にあっていないイラスト」になっている事である。
 大抵は小さいミスであるから読者諸氏はあまり気にされないかも知れないが、描いた本人としてはミスを発見したときの悔しさは大きい。「20才くらいの女が男を泣きながら殴る」と指定されたから右手でぶん殴らせたら文中で「左手を一閃」なんて描写されてた、なんてのがあった日にはもう断腸の思いである。
 しかしこんなのはまだ可愛い方である。過去にはもっと恐ろしい話が現実に起こった。
 敢えて名前は伏せるが(と言っているのにバックナンバーを見て調べたりしないこと)、とあるシェラのマスターから私に次のような指定が来た。「密航者の女の子が自分の父親であるPCライダーを探すため、管制部のマイクをジャックして叫ぶ」――私は指定通り仕上げて小田さんに送った。
 果たして送られてきたぽすたるのシェラには、……冒頭で少女が大声を張り上げる場面がでかでかと描かれているにも関わらず、そんな場面などどこにも無かったのである……

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