○月●日 天気 雨のち晴、ところにより雪
ペン入れは、いつもの事だが神経を使う。どんなに下描きの出来が良くても、こいつがうまくいかなければどうしようもない。そうかと言って下描きどうりになるように描こうとすると返って手元が狂ったり、線が堅くなったりしてしまう。
無論、それはトーンや効果の場合も一緒。手に力を入れすぎず、抜きすぎず、指先の微妙な加減でペンやカッターや筆ペンを操らなくてはならない。
その為には日夜不断の努力が必要である。……などと言って大げさな事をしているわけではないが。私がやっているのは、日頃からシャーペンやサインペンなど「指先のコントロールがあまり必要でない筆記用具」をなるべく使わず、極力鉛筆を使うようにするという程度の事である。
まあ付けペンなどと言う前時代の遺物のごとき物を今時使っている方が悪いのかも知れないが、ロットリングの類は余り性に合わないのだから仕方がない。自分は付けペンの方がいいと思っているから使っているというだけの話だ。重要なのはそれを如何に使いこなすか、につきる。
とは言うものの、付けペン派がどんどん少なくなりロットリング・ミリペン派が台頭してくるのを見るにつけ、何となく寂しさを感じるのもまた事実。若い絵描きさんが、「いやーまたロットリング壊しちゃったー」などと得意げに話しているのを聞くと筆圧をコントロールする練習をせい! と言いたくなるのだが、「筆圧が高いからロットリングを使ってるんですよー」などと言われた日には何も言い返せない。
「色塗るときはどうするんです? 筆はペンの延長だから、指先のコントロールがうまくないと……」
「マーカー使うから大丈夫です」
……俺は
貧乏だからそんなもん持ってねえんだよっ。
金がテクニックを排除する時代がくるのだろうか……私は貧乏だから、そんな時代が来ないように祈るばかりである。
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第6回