第4回 「インクビン」


インクビン ○月●日 雪、じきに雨

 ……ふーむ。ふむ。ふむ……ぺらぺらぺら。
「やっぱ士郎正宗はええなあ……」……
 これでも一応イラストを描いているのである。……何? とてもそんな様子には見えない?
 ではお尋ねしよう。あなたはいったいどういう状態の事を「イラストを描いている」と言うのだろう。食事を忘れて四六時中机に向かいっ放しの状態? あるいは何も見ないですらすらすらっとペンを走らせているとき?
 まあイラストの描き方なんて人それぞれだから「これが正しいイラストの描き方だ!」なんてものはないけど、少なくとも私のスタイルじゃない。私は描いている最中に何度も煮詰まりながら、じっくり時間をかけて描いていくタイプだ。前に煮詰まったときの話をした(17号)けど、そういう時にマンガを読むのは決して無駄じゃあない。煮詰まったときに何か他の人の絵を見たり、一度デッサンの基本にたちかえったり……という気分転換一つでそれまでのものよりも遥かに良いイラストが描ける事が多いのだ。  ちなみに、私の机にはいつでもすぐに引き出せるように次の本が立てられている。……「イントロンデポ1」(青心社)、「人体のデッサン法」(嶋田出版)、「人体デッサン」(視覚デザイン研究所)、「ヘア・カタログ75」(主婦の友社)……というところ(なんでデッサンの本が二冊もあるかと言うと、前者は表情や仕草の描き方の参考に、後者はポーズモデル代わりに使っているから)。他に参考になるものと言えば床中に転がっているマンガの山、同人誌、パソコン雑誌(!?)、昔のポスタル・テイル。などなどなど。
 中でも「イントロンデポ1」はお気に入りである。なんつっても士郎正宗! 日本のマンガ家の中でこの人ほど人体の中に骨格を感じさせる人はいない(と思う)。おまけにきれいなフルカラー画集。かーいい&美しいキャラクター達。ああ、大枚はたいて買った甲斐があった……難点があるとすればただ一つ。
 ……見てると、時間を忘れるのだ……

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