第3回 「ペン先・ペン軸」


ペン先・ペン軸 ○月●日 天気 雨時々曇

 夜。静かな夜。
 かりかりかりかり……
 今夜も絵を描いている。別に締切に追われているわけではない(今回は)。
 学校は冬休みに入ったばかり、昼間はまるまる時間が空いている。バイトだって午後からだ。何も夜中に描く必要はないのだ。
 なぜ昼に、私は描かないのか。
 答は簡単。夜中に描いた方が「らしい」のである。

 昼よりは当然、夜中の方が静かである。聞こえてくるのは虫の声と、たまにやってる入間基地の夜間飛行訓練の、レシプロ機のプロペラ音(さすがにジェット機ではやらないらしい)だけ。
 最高の環境である。紙の上に自分の世界をつくり、ペンとシャーペンの先に没頭していく。
 やがて、おもむろに顔をあげて窓の外を見る。灯のついた窓は一つもない。この町で起きているのは私一人。
「あぁ…俺って社会に背を向けてるなあ…」
などと訳のわからん快感に浸る…のは私ぐらいのものだが。

 とはいえ、本当に夜描いた方が昼間に描くよりいいモノが描けるかと言えば、決してそんなことはない。気分がのっていなければいつ描こうが下手は下手だ。
 単に私の場合は、昼間は余りのれない、と言うことなんだろうと思う。
 そして今日も私は、わざわざ夜中になるのを待ってイラストを描き始める……

 ……zzz……っ、はっっ。いかん、知らない間に寝てしまったらしい。ああ、もうすぐ朝になってしまうではないか。ま、いいや。まだ〆切までには時間があるし、今日はこれで寝ることにしよう。おやすみなさい……

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