9月(陰暦8月)
秋夕(추석)
韓国では旧暦の8月15日は秋夕(チュソク)と呼ばれ、日本のお盆のような行事をします。儒教行事で、先祖の位牌に対して祭祀(チェサ)を行い、墓に参ります。日本のお盆は旧暦7月13日から15日にかけて行われる仏教行事ですが、現在では東京など一部の地域は暦どおり7月13日から15日まで、多くの地域では、ほぼ旧暦が新暦より1ヶ月遅れになる事から、陽暦8月13日から15日にかけて「月遅れのお盆」として行われています。旧暦の8月15日は、日本では仲秋の名月で、月見の日に当たります。ちなみに、2014年の旧暦8月15日は、9月8日にあたります。

この日は一族が集まって、先祖をまつる儀式を行います。そのため、帰省ラッシュは大変なものです。また、ソウルでも多くの店が閉まってしまうので、観光は避ける時機でもあります。

秋夕は韓国の「三大名節」の一つとされ、韓国語では「ハンガウィ(한가위)」とも言います。「ハン(한)」は「大きな」、「ガウィ(가위)は真ん中(>가배_가운데)」の意味で、「8月の真ん中のもっとも大事な日」ということになります。元々月明かりの下で祝い事をする信仰週間が、起源だとされています。ただし、第二次世界大戦後、月に対する関心は次第に弱くなっているようです。また、秋夕の時機は、農作物が実る時機でもあるので、収穫祭の意味もあります。

祭りは深夜に始まります。祭壇に、新たに採れた果物や穀物を並べて、祖先に対して祈り(チャレ)をした後、祖先の墓に行き、草取りをして、拝礼をします。祀る祖先は五代前の先祖までです。チャレは正月にも行いますが、正月はチャレの膳に餅が載ることに対して、秋夕にはソンピョンが乗ります。

また、稲、黍、粟などの穀物の穂を抜いてきて、柱や門の上にかけておく風習もあります。この籾は翌年の種まきの時に蒔いたり、祖先の位牌に捧げた後食べたりします。

近年はなくなってしまいましたが、嫁に行った人が、実家に戻る道の途中で母親と会い、一緒に食事を食べて、それまで会えなかったことをわびるパンボギ(반보기)という行事もありました。

秋夕の食べ物にソンピョン(松餅)があります。ソンピョンを蒸すときに松葉を敷くので、このような名前になったといいます。新米の粉をお湯で溶き、餅を作った後、そこにごま、小豆、大豆、緑豆のようなものを包み、半月模様にして蒸します。満月の秋夕にこれを食べることで、1年間農業がうまく出来たことを感謝する気持ちを表すとのことです。

また、秋夕には里芋汁も食べます。韓国ではサトイモのことをトラン(토란)と呼びますが、これは「土(ト)」の中の「卵(ラン)から来ています。ソンピョンとサトイモ汁、そして果物はは祭祀の膳に必ず載せなければならないものです。ソンピョンは天の果実、果物は地上の果実、里芋は地中の果実を象徴するからです。

チュソクの代表的な踊りに、カンガンスルレがあります。これは全羅道、慶尚道でよく踊られるもので、女性が円陣を組んで「かごめかごめ」のように歌を歌いながら回っていきます。

農事を手伝った牛に感謝する行事もあります。むしろを二人でかぶり、牛の前足、後ろ足の役をして、牛の真似をして村内の家々を訪ね周ります。後ろには農楽隊がついています。牛が訪ねる家は、その年に農業を一生懸命行った家や、金持ちの家で、そこで鳴き真似をして、「腹減った」と言います。食べ物をもらうと、庭先で農楽隊と共に踊ります。
(参考:원영주著、 열두 달 세시 풍속)