| ハイランド・パイプに関するお話「パイプのかおり」番外編 |
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《独学》と《自己流》は違います ハイランド・パイプ(Great Highland Bagpipe)は、スコットランドの民俗楽器です。 その一方で、まことに民俗楽器らしからぬ特質で、かつ同時にハイランド・パイプの音楽を何よりも特徴づけているのが「高度に発達して洗練された装飾音のシステムが、厳格な形で守られ伝承されている」ということです。それらは主にピーブロックの発展とともに熟成されていったものですが、基本的な部分においてはダンス曲やマーチ、スローエアーなどその他全ての楽曲についても遍く共通して言えることです。そして、このことは演奏形態がソロの場合でも、あるいはパイプバンド形式の場合でも全く変わることはありません。 同じケルト系の伝統楽器でもアイルランドのイリアン・パイプ(Uillean Pipes)で使われる装飾音は、同じアイリッシュ・ミュージックの演奏で使われるウィッスルやフルートの装飾音と基本的に大きく異なることはありません。また、ハイランド・パイプのようには装飾音のルールが厳格に定まっている訳ではないので、奏者は自分の好みで適当な箇所に適当な装飾音を挿入する自由があります。 ハイランド・パイプは極めて原始的なハードウェアを維持したまま、ソフトウェア(演奏技法)を高度に発展させて、他のバグパイプとは一線を画したハイランド・パイプ独特の洗練された音楽文化を築いてきたのです。このことは、ある意味では一般的な民俗音楽のイメージとは少々掛け離れているかもしれません。また、「奏者が自分自身の思い通りに演奏する自由が奪われている」と感じられるかもしれません。 しかし、そのことでハイランド・パイプの音楽が魅力の無いものになっているでしょうか? とんでもありません。先人たちが確立し長年に渡って幾多の人々を通じて伝承されてきた、高度に洗練されたハイランド・パイプ・ミュージックがつまらない音楽である訳がありません。大先輩達が営々として数世紀かけて築いてきた伝統的奏法というもの、長年かけて伝承されてきたものにはそれなりの洗練、熟成があります。 確かに、ハイランド・パイプの込み入った装飾音に取り組み始めた当初は、誰しも「何故こんなメンドクサイ装飾音を覚えなきゃならないんだ?」「どう考えたったこの装飾音は合理的じゃない!」「もっとスマートな装飾音に変えた方がいいんじゃないか?」と、呪いの言葉の一つや二つは頭に浮かぶでしょう。でも、ある装飾音を何百回、何千回と反復練習して一旦指に覚え込ませてしまえば、いつかはどんな複雑な装飾音でも苦もなく演奏できるようになるものです。 これからハイランド・パイプに取り組もうとされる方は、伝統に培われたスコットランド・ハイランドの音楽文化を敬う気持ちを決して忘れず、謙虚で真摯な気持ちで伝承されて来た音楽のあるがままの姿を楽しむことを目指していただきたいと思います。 正確な装飾音の修得無くして、ハイランド・パイプの伝統音楽は成立し得ません。 幸いなことに世界に数多ある各地の民俗楽器の中でも、ハイランド・パイプ愛好者の絶対数とその広がりは飛び抜けて大きいものがあります。ある意味では「世界中で最も親しまれている民俗楽器」と言って差し支えないでしょう。 残念ながら、ハイランド・パイプの仕組みや演奏方法について日本語で詳細かつ正確に解説されたお薦めのサイトは(かつては有ったのですが)現在のところ有りません。その反対に、不十分な知識と勝手な解釈で信じられない様なデタラメを堂々と記述しているサイトを見掛けることがあります。間違っても、そのような間違った記述に惑わされないようにくれぐれもご注意下さい。 そして、ハイランド・パイプのもう一つの魅力は完璧に調律された3本のドローン・ノートとチャンター・サウンドの絶妙な調和です。そして、そのためにはパイプの適切なセットアップ&メンテナンス技術が欠かせません。最も悩ましい作業であるチャンター・リードの調整を筆頭に、ドローンを正しく安定して鳴らせるためのリード・メンテナンスについても、いい加減な調整のままに乱れたドローン・ノートを発することないように、また無闇な自己流の作業で値の張るパーツ類に取り返しのつかないダメージを与える前に、そして、先人たちの失敗を無駄にしないためにも、世に出ている正しい情報を収集して、まずはそれに忠実に従うことを勧めます。 ハイランド・パイプの音色の魅力に取り付かれて、自分でもやってみたくなったからといって、近くに直接教えてもらえるような人が居る、という恵まれた状況にある人ばかりではないでしょう。日本に居ながらハイランド・パイプの音楽に取り組むという上で、ある程度は《独学》で道を切り開いて行くという覚悟と心意気は不可欠だと思います。ただし、演奏技術に限らずセットアップやメンテナンスについても、無闇な《自己流》は止めましょう。 単に音を出す事自体が非常に難しいハイランド・パイプに於いては「習うより慣れろ」という言い方は単純には当てはまりません。楽器本体に慣れる前にまずはプラクティス・チャンターに慣れる事が必須です。 ハイランド・パイプに取り組まれようとする方は、まずは、なんらかのプラクティス・チャンターとともに、The College of Piping の“College Tutor Part 1 (グリーン・チューター)”か、The National Piping Centre の“The Highland Bagpipe Tutor Book”を入手することから始めて下さい。そして、最初のページの最初の音から地道に練習に励まれる事をお勧めします。真のハイランド・パイプ・ミュージックを楽しむためには、一見遠回りに見えてもこのルートが最も確実であり、かつ近道なのです。 最後に…、 もちろん、そのような場合にはパイパー森も出来る限りのお手伝いはいたしますので、遠慮なくご連絡下さい。 Have a enjoyable piping life! |
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