パイパー森のSelf Interview
第1回 第2回 第3回

●第2回インタビュー

I:こんにちは、先日はどうも。この間のインタビューの後、森さんのコーナーの文章を読ませて頂きました。
M:どうもです。ところで、今日は一人?
I:そんなこと、どうでもいいでしょ。Jailbird編集長に言い付けられてるんで、今日は絶対にインタビューを完成させなくちゃいけないんです
M:あっ、すんません。じゃ、どうぞ。
I:あの〜、私、元々ロックファンなんで気がついたんですけど、森さんの文章や掲示板のカキコミを読んでるとレッド・ツェッペリンの引用がよく見られるんですが、トラッドだけじゃなくてロックもお好きなんですね。
M:ピブロッカー森って名乗っている程ですから、ピーブロックとロックミュージック、どちらも私にとっては無くてはならない音楽です。
I:ピブロッカー? まだ、名前があるんですか。
M:ロックンロール魂でピーブロックを演奏する、世界で唯一のパイパーなんだ。
I:また、エラそうに…。要は大きな音で自己陶酔したいだけ?
M:なんか、トゲのある言い方だね〜。

I:ロックのライブなんかにもよく行かれたんですか?
M:高校の時には日比谷の野外音楽堂のフリーコンサートなどにはよく行きましたね。武道館でやったレッド・ツェッペリンの初来日公演にも行きましたよ。
I:キャー! それってスゴイですね。私、あの公演に実際に行った人に会ったのって初めてです〜。
M:えへん。でも、米山さんの掲示板にカキコミしているような人の中にはそんなのがゴロゴロいますがね〜。
I:え〜、ホントですか〜? キャー、素敵なオジさまたちだ〜。
M:オバさまも居ますよ。このオジさまは,ウッドストックの映画だってリアルタイムで見たんだぞ。3時間の映画を2回続けて見たもんな〜。ところで、Iさんは最初に日本に来た外タレバンドって何だか知っていますか?

I:え、逆インタビューですか? え〜と、いつか、日本のロックミュージックの歴史の本を読んでいたら、ジョン・メイオールって人が最初だと書いてありましたけど…。
M:いや〜、それが違うんですよ。実は、それより以前にイギリスのアライバル(Arrival)というバンドが文字通り日本に「到着」していたんですね。日比谷野音でフリーコンサートをやったんです。それにも行ってます。
I:あの〜、それって、何か自慢になるんですか?
M:…、いや、あの、別に…。まあ、それはとにかく、その後に、例にジョン・メイオール、フリーって続く訳だ。みんな見に行ったな〜。
I:ええ、フリーの来日はかなりインパクトあったらしいですね。例の歴史の本に書いてありました。
M:歴史ね〜。

I:特にお好きだった曲ってありますか?
M:小学高学年の頃にラジオで聴いたドアーズの「ハートに火を着けて」とジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」が私のロック人生の始まりです。もちろん、当時は四六時中ロック番組を聴いていた訳ですから、ビートルズ、ストーンズを始め、当時ラジオから流れていたような音楽はみんなかじり付いて聴いていた訳ですけどね。中でも特に、この2曲がなによりも印象的でしたね。
I:ドアーズってのは素敵な詩を沢山書いたジム・モリソンがヴォーカリストだったバンドですよね。一度聴いた事がありますが、ジェファーソンなんとか言うのは…?
M:はあ、そんなもんでしょう。でも、ジェファーソンってフェアポート・コンベンションに繋がる音楽性を持っているんですけどね〜(注1)。

I:え〜と、フェアポートっていえば、森さんはペンタングルからトラッドに入ったとか?
M:そうですね。
I:それも、ブラック・ホークですか?
M:いや、ペンタングルを聴いたのは、ロックを盛んに聴いていた高校1年の頃、ラジオの音楽番組ででした。クルーエル・シスターってアルバムに入っているジャッキー・マクシーが無伴奏(アカペラなんてシャレた言い方はしなかったな〜)で歌う“When I was In My Prime”って曲を聴いて、まるでハンマーで頭をガーンって叩かれたようなショックを受けました。
I:ロックとはちょっと違ったんでしょ?
M:もう、全く違う訳ですよ。でも、何故か無伴奏のそのシンギングの持つ力強さに圧倒されてしまいました。翌日、早速、そのLPを買いに走りましたね。
I:LPなんですね。時代を感じますね。
M:そんなことで時代を感じられちゃたまらないな〜(注2)。
I:それから、直ぐフェアポート・コンベンションですか?
M:最初はとにかく、ペンタングルばかりでした。ペンタングルでイギリスのフォークソングやバラッドに徹底的に洗脳された訳。そして、ギタリストのバート・ヤンシュやジョン・レンボーンのソロアルバムなども含めてLPを20枚程コレクションしましたね。フェアポート・コンベンションを聴いたのはそれからです。松平さんの追悼文に書いた通り、それこそブラック・ホークに行くようになる直前でした。

I:さて、肝心のバグパイプ、ハイランド・パイプっていうんですか、の話を聞かせていただきましょう。お話だと、他の楽器を全くなさらないのに、いきなりバグパイプを始められたそうですが?
M:ええ、そうなんです。
I:それって、ちょっと無謀なんじゃないですか?
M:はい、無謀でしたね。
I:バグパイプを選んだ理由は?
M:実は、私、ひどい音痴でして…。
I:えっ,どういうことですか? 音痴とバグパイプって何の関係があるんですか?
M:私、歌が歌えないんです。自分の頭の中でイメージしている音程が口から出てこない。頭の中ではちゃんと歌っているのに、発声されるのはひどい調子っはずれって訳。

I:でも、自分でそれが分るなら音痴じゃないんじゃないですか?
M:いや、自分では分らない。
I:じゃあ、どうして分かったんです?
M:スティーライ・スパンの2ndアルバムに“The King”という歌があるんです。メンバーが無伴奏5重唱で歌うすごく素敵な曲なんですが、ある時、行き着けだった下北沢の喫茶店で、お店のマスター夫妻たちと私たちでその曲を歌おうってことになったんですね。
I:あの松平さんの追悼文に出て来たお店ですね。
M:そうです。そうしたら、私がひどく音程を外すので滅茶苦茶になっちまって、他のみんなはガクッっと来ちゃった訳。

I:それはショックだったでしょうね。
M:当の本人は分らなかったんだけど、Tさんは非常にショックだったようです。「イワン・マッコールがするように、片手を耳に当ててみれば自分の音が分るわよ。(注3)」って、一生懸命アドバイスしてくれたんだけど…。確かにスティーライのライブ写真ではメンバーがそうやって歌ってるし「カッコいいな」って思ってそうしてみたんだけど、全くダメ。《真正音痴》は死ななきゃ治らないのね。
I:まあ、可哀想。その時の彼女のお気持ち、お察ししますわ。
M:それでもって、私もアホじゃ無いから「バグパイプは口にパイプをくわえる訳だから、つまりは歌は歌えなくなる。ということは結果的に人に迷惑をかけなくて済むだろうし、自分も恥をかかなくて済むだろう。」って考えて、彼女がイギリスに行く時にバグパイプを買って来てくれるように頼んだんです。
I:それで、例のプラクティスチャンターの話しに繋がるんですね。
M:そうです。なんともペーソスに溢れた裏話でしょ。
I:バグパイプについていろいろと書かれているので、この楽器を始められたもっともらしい理由でもあるのかと思ったんですけど…。まあ、編集長と相談してカットするかどうか決めましょう。
M:ピーブロックってホント、悲しみとペーソスに溢れているんですよ。
I:それとこれとは違うと思うんですけどね〜。
M:…ええ、まっ、そうですね。

I:ところで、そのピーブロックって音楽ですけど、私、森さんが書かれていることを読ませて頂いたり、インターネットラジオでちょっと聴いてみたたりしたんですけど…、あのー、こんなこと言ってお気を悪くされないかと心配ですけど、私には、ちょっと難解だったんですけど、森さんはピーブロックのどんな所がお好きなんですか?
M:ピーブロックの魅力ね〜。うん、うん、いや〜、それについて話し始めると徹夜になっちまうね〜。かと言って私もそれほど若くないから、徹夜はいやだし。それより、編集長に頼んで電車賃出してもらってさ、Iさんがまた来てくれたらさ、第3回目のインタビューをしてもらえるんだけどな〜。ねっ、どお? また、じっくりとインタビューしにおいでよ。今度も一人でさ…。
I:えー、えー、分りました。森さんってピーブロックのことになると途端に人が変ってしまうんですね。冷静になれないってのホントなんですね。
M:あっ、私なんかマズイ事言いました?
I:いえ、いいんです。編集長も分かってくださるでしょう。では、この辺でインタビューは終わりにさせて頂きます。
M:えっ、だって、ピ、ピーブロックについて…。
「バタン!」(ドアの閉まる音)コツコツコツ…。

注1:ドアーズもジェファーソン・エアプレインも、1960年代後半にアメリカ西海岸を中心にサイケデリック・ロックの雄として活躍したバンド......ということは言わずもがなですな。ありがたいことに、どちらも未だに容易に購入できる。

注2:全くである。これではまるで、LPを現役で知っている人間は棺桶に片足突っ込んでいると言わんばかりではないか。ま、しかし敵は物心ついた時にはもうCDだった世代なのだから、いかんともしがたいのだが。

注3:イワン・マッコールは戦後イングランドのフォーク・リバイバルの立役者。片手を耳に当てて唄うスタイルは、良くも悪くも彼のトレードマークだった。ちなみにあれは指を穴につっこむと、さらに聴こえが良くなります。また、耳たぶだけを餃子のような感じで押し当てると、低音が消えて「他人に聴こえる自分の声」に近くなります。どうでもいいけど。

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