パイパー森の音のある暮らし《2005年11月》
2005/11/3
(木)

クリーム再結成

 今年5月に行なわれたクリームのリユニオン・ライブのDVDがリリースされました。
 何とも感涙モノの映像です。


 しかし、当初このリユニオン・コンサートの企画が知らされた時、私も含めて決して少なくない数の人が、複雑な思いを抱いたと思います。
 つまり、クラプトンはまあ別としても、後の2人の名前は最近とんと耳にすることもなかった訳ですから、殆どリタイア同然だったはずのそんな2人を含めて、全員60才以上の3人のための「年金ライブ」なんかに、何の意味があるのか?
 また、このところ完全にレイドバックした音楽しか演奏していないようなクラプトンが、最盛期のクリームの曲を演奏して一体全体どんな事になるんじゃろ? 大体演奏できるんだろか?


 ところがどうでしょう。今回のライブ映像に映し出された彼等3人の勇姿からは、37年前のロイヤル・アルバート・ホールでの解散コンサートにも勝るとも劣らない感動が得られました。

 もちろん、それは37年前の演奏のように「一体どこまで暴走して行ってしまうのだろう?」と思わせるような緊張感溢れるものでは無いかもしれません。
 また、エリック・クラプトンがインタビューで「皆の体力面が心配だった。」と述べていたとおり、一時の肥満体がその後の病気ですっかり痩せてしまっていたジャック・ブルースは、自分がボーカルをとらない幾つかの曲では、ハイチェアに腰を預けて演奏していました。

 でも、確か65才にはなっているはずのジンジャー・ベイカーは、往年とまるで変わらないパワフルかつ彼独特の音色のドラミングを聴かせてくれるし、クラプトンは汗びしょになりながら、当時と変わらない流麗かつ味わい深いソロを聴かせてくれます。
 確かにジャック・ブルースは往年の彼がしたように、まるで「喧嘩を仕掛けているのか?」と思わせる様な多彩なベースラインを繰り出すといったように強引さはありませんが、十分にクリエイティブな演奏を繰り広げてくれます。そして、なによりびっくりさせられたのは、あの艶のあるパワフルなヴォーカルが想像以上に衰えていないということです。
 つまり、いじわるな言い方をすれば、この37年間で格段に上達したクラプトンのヴォーカルと相まって、リユニオン・クリームのヴォーカル・パワーは当時を上回っているとも言えるのです。

 そして、ジャック・ブルースに関してもう一つ印象的だった点は、彼が椅子を使わずにベースを弾きながら歌う時の姿勢の良さです。
 マイクスタンドの前で両足を踏んばってすっと背筋を伸ばしてベースを抱えたその姿勢は、まるで(姿勢の良い)ハイランド・パイパーのそれを思わせるもので、やはりパワフルなヴォーカルはあの良い姿勢だからこそ生み出されるのだな〜、と感心させられました。


 でも、そんなことよりも何よりもこのクリームのリユニオンの大きな意義は、解散から37年も経過した後にメンバー3人が健全で実際にリユニオンが可能だったという単純な事実なのです。
 クラプトンもインタビューでしみじみと語っている様に、ビートルズやレッド・ツェペリンの例を出すまでもなく、他の多くの著名なバンドでは、既にメンバーの誰かしらが死んでしまっていて、いくらリユニオンしたくても、それは到底かなわぬ夢であるケースが殆どなのですから…。

 そして、その意味するところを一番良く分かっているのは、当日のコンサートに集まった往年のファンたちであり、それは映像に映し出される、ステージ上の3人の演奏を満足げに見つめる彼等の笑顔に見事に現れています。

 当時、モノラルラジオにかじりついて聴いてた往年の名曲の数々を、現代のハイテクによる素晴らしく鮮明な映像&音響で再現されたライブ映像を堪能できるという満足感だけでなく、ステージ上の3人とそれを見つめる大勢の観客たちに共通している、会場全体に充満する幸福感が画面から溢れ出て来て、見る度にほのぼのとした気分になれる素晴らしいDVDです。


 大げさではなく、身近な同世代の人々が次々と逝ってしまうようなこの歳になると、「生きていること」の有り難さを実感することが出来るだけで、無上の幸せを感じるものなのです。

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