パイパー森の音のある暮らし《2003年7月》
2003/7/25(金)

雨の蓼科は落ち着く

 例年のごとく夏休みで蓼科の山荘に来ています。

 今年は、まさに異常気象で梅雨明けを待たずにこちらに来ました。標高1700mのこの辺りはまさに山の天気なので、気まぐれに抜けるような晴天になるかと思えば、一転にわかにかき曇り天が抜けたかと思うような大粒の雨が降る、あるいは霧に煙る中でしとしとと弱い雨が降り続く…、なんて風に雄大な自然を満喫しています。

 でも、晴れてしまうと黒ずんだベランダのカビをたわしでゴシゴシ落としたり、フローリングの水拭&ワックス掛けやら窓拭き、そして山荘周りの草刈やら落ち葉掻き、さらには、冬の間に雪の重さに耐えかねて折れて落ちている落葉松の枝をナタで薪にするなどなど…、ついついなんやかやと精を出してしまいがちです。

 ですから、負け惜しみではなく、雨降りは決してイヤな事ばかりではありません。というか、ここでもにも書いたように、私はこのような雨降りの森の中に居ることが大好きです。

 落ち着いて音楽を聴いたり(決して静かな音楽ばかりとは限りません)、新しいピーブロックの習得に励んだり、本を読んだり(小難しい本じゃないですよ。今年の夏はハリー・ポッターの最新作“The Order of The Phoenix”です)、サイトのページづくりに励んだりすることに集中できるからです。

 …で、今日は最近カレッジ・オブ・パイピングから復刻・出版された古いピーブロックの楽譜集“BINNEAS IS BORERAIG”についてパイプのかおり第14話としてまとめ作業がはかどったので、無事アップロードすることができました。

2003/7/29(火)

山々に響き渡るパイプの音色

 いつものパイパー森のパイピングスポットは山荘から車で2、3分の標高1800m程の国道に面した広場にあります。

 以前にも書いたと思いますが、そこは、国道が冬の間通行止めになるゲートのある場所にあり、冬はそこで車を停めてそこからはクロスカントリ−スキーに履き替えて山に分け入ったり、国道を登って行きます。ですから、元々は冬場のクロスカントリースキーの基地のような位置付けで、夏は単なる草っ原広場って感じでした。

 ところが、バブル経済華やかりし頃に突然、中腹にある某リゾートマンション専属の冬の遊び場としてログハウスのコテッジが数棟建てられ様相は一変しました。トイレ棟までパウダールーム付きの小さなログハウスだったりして…。もちろんウォッシュレット付きで。
 でも、蝶ネクタイ姿のボーイがレストハウス棟でゲストを丁重に相手していたり、いい歳したおじさんが指導員に教えられながら、おっかなびっくりスノーモービルを乗り回すようなバブリーな光景は、結局その冬限り。その年にバブルが弾けてチョン…。

 …で、国道からは直接は見えない程にちょっと離れたところにある、レストハウス棟として使われていた一番大きなログ・コテッジのウッドデッキが、今ではパイパー森専用のステージになっている訳です。
 ガラス越しに覗ける室内には分厚いムートンが敷かれた豪勢なソファー、そしてテーブルの上には、まるでついいましがたまでゲストで賑わっていたかのように缶ビールが並んだまま。一方で、だ〜れも手入れをする訳ではない雨ざらしのウッドデッキは年を重ねる毎に確実に朽ちてゆきつつあります。
 バブルの残像が残るそんな場所でラメントを演奏するのは、人の世のはかなさを感じさせて、それなりに雰囲気があるな〜、と感じるところです。


 広場の入り口にはチェーンが掛かっているのですが、チェーンの外に数台分の駐車スペースがあるので、夏休み中の人出が多い時などは、時々車を停めて広場で遊んでいる人がいたりします。
 ですから、例年ですと(一応デリカシーのかけらはあるパイパー森としては)人の居そうにない夕方の遅い時間などを狙って行くのですが、今年は夏らしい夏が来ないので絶対的な人出が少なく、いつ行っても誰も居ません。
 …で、今年はいつでも気が向いたときに出かけて行ってパイプを思いっきり吹いてます。
 先日は朝の9時、昨日は午後3時、今日は4時ってな具合に。
 昨日は、最近のお気に入りの2曲、“The Vaunting”“Lament for the Earl of Antrim”を、今日は、20年来のお気に入り“Desparate Battle of the Birds”とパイブのかおり第14話で楽譜を紹介した“Prince's Salute”を演奏してきました。

 ウッドデッキのステージで演奏を始めて、ピーブロック特有のゆっくりした歩きで、原っぱの方に移動。
 低く垂れ込めた雲はまるでスコットランドを思わせ、スコットランドの国花であるアザミの群生をバックに、山々を仰ぎ見ながら、思う存分にピーブロックを演奏するのは、なんとも爽快そのもの。

 こんな、贅沢な音のある暮らしを堪能している人ってそんなに居ないだろうな〜、って思いつつ自己満足に浸っています。

2003/7/30(水)

ピーブロックは身体で憶える

 今日は午後4時に森のステージに行き、今回の滞在中に完全習得を目指して練習してきた“Lament for MacSwan of Roaig”を初めてパイプで演奏してみました。
 この曲は、“Lament for the Children”の作者である Patrick Mor MacCrimmon の作とも、あるいはその父親である Donald Mor の作とも言われる曲で、シェーマス・マックニールはBBCのテレビ番組の中で「この曲は全てのハイランドラメントの中の最高傑作だと言う人々もいる。」と解説している程に、妙なる美しいメロディーのラメントです。

 ピーブロックには複雑そうに聴こえても割合すぐに覚えられる曲と、その反対にメロディーは馴染み易いのになかなか覚えられない、という曲があります。パイパー森にとって、“Park Piobaireachd No.2”などはまさに後者の代表例です。

 実はこの MacSwan of Roaig も大好きな曲なのでメロディーはすっかり頭に入っているし、簡単に覚えられそうだと思って練習を始めたのですが、なかなかどうして手強い曲でした。パターンがつかみ難い…。

 …で、とりあえず今日は「ウルラールだけでも…」って感じで演奏を始めたのですが、極上に美しいそのメロディーを演奏し始めたところで、一気に陶酔モードに入ってしまったら、あら不思議、ちゃ〜んと身体(指)が覚えているんですね〜。
 「じゃ〜、つっかかるところまで」って風に演奏を続けて行ったら、なんとタールアー・バリエイションまで演奏できてしまいました。これならもうすぐ完奏真近ですね。

 ドローンも絶好調だし、それだけで止めてしまうのはもったいなかったので、休止なしで連続して“The Vaunting”を完奏。満足満足!

2003/7/31(木)

高地トレーニングの成果?

 今日は、昨日から繰り返しクルンルアー・バリエイション(シングリング&ダブリングね)をおさらいした成果はいかに?って感じで、“Lament for MacSwan of Roaig”完奏にチャレンジしました。
 う〜ん、なんとかだまだまし最後まで演奏したけど、まだまだ完奏とは言い難い。まだ、頭の中で次のフレーズを考えながら演奏する始末だから、身体で完璧に覚えきったとはとても言えませんね。

 このピーブロック自体が本当に素晴らしい曲であり、なんとかして習得するだけの価値は大有りなのですが、実は私にはその先にはもう一つの目標があります

 パイパー森が一番好きなピーブロック“Lament for Patrick Og MacCrimmon”のウルラールには Low G から High G に飛ぶ throw to High G という装飾音が繰り返し出て来て、そこが最高の聴かせ所です。
 でも、この装飾音は同時に最高の難所でもあり、それこそもう何年もの間、繰り返し繰り返し練習していますが、いつまでたっても満足できるような端切れの良い演奏ができず、未だにパイプでの演奏には自信が持てないままなのです。

 このようにある装飾音が上手く出来ないため、その曲全体を完璧には習得できとは言えない、というようなことは時々ありますが、そのような時でも、何故かその装飾音が出てくる別の曲なら上手く演奏できるようになる、ということがあります。多分それは、その装飾音の前後の音との関係だと思われますが…。
 そして、そのようにしてある曲でその装飾音ができるようになると、次にその前にはどうしてもその装飾音が上手く出来なかった曲においても、今度はすんなりと出来るようになっている、ということがあるのです。

 …で、実はこの“Lament for MacSwan of Roaig”のウルラールにもその throw to High G が出てくるのです。ですから、まずはこの曲を完璧にこなすことができれば、今度こそ、私の究極の目標である“Lament for Patrick Og MacCrimmon”ももう少しマシな演奏ができるようになるのではないか? という淡い期待を抱いているのです。


 マラソンの高橋尚子さんじゃないですが、連日標高1800mで演奏していると、この高度にも徐々に慣れて来ました。
 野外なのでついつい強く吹きすぎてしまうからか、いつも室内で演奏しているリードでは裏返ってしまうので、それよりちょっと堅いリード(といってもケーンのリードに比べたらシンセティックリードは何とも吹き易い)を使っているせいもあり、最初は1曲がせいぜいだったピーブロックも、ここ2、3日は軽々と2曲はOK。高地トレーニングの成果あり?

 …で、今日は、Patrick Mor MacCrimmon に敬意を表して出来損ないの“Lament for MacSwan of Roaig”に続いて“Lament for the Children”を演奏してきました。
 高度馴化の済んだ身体も、そして昨日に続いて十分に乾燥させたドローンも最高に良い調子なので、丁寧に丁寧に、そしてゆっくりとゆっくりと、20分近くかけて心を込めて演奏しました。本来そのように演奏すべきこの曲も
体調が悪いとテンポが早くなってしまって、短ければ15分程度で演奏を終えてしまいます。でも、それではこの曲の本当の良さは半減してしまいますので、体調さえよければゆっくりと演奏するに越した事はありません。

 久しぶりに晴れて湿度も下がった森のステージはシチュエーションも最高でしたし、今日は、この“Lament for the Children”に関してはこれまで最高の演奏ができたように思えました。

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