パイパー森の音のある暮らし《2002年11月》
2002/11/17(日)

MR.JIMMY

 というバンドのライブに行って来ました。バンド名からご想像のとおりあの“レッド・ツェッペリン”のトリビュート・バンドです。それも究極の…。

 私が自分のお小遣いで初めて買ったレコードはレッド・ツェッペリンのセカンドアルバム(“Whole Lotta Love”で始まるヤツね…)。そして、高校2年生の時には武道館での彼等の記念すべき初来日コンサートに出かけたものでした。

 しかし、その直後のペンタングルとの出会いが私をロング&ワインディングなブリティッシュ・トラッド愛好の道へと導き、挙げ句の果てにはロッカー森はパイパー森になってしまったという訳。
 で、さらに演奏する曲はロックとは対照的なピーブロックとくれば普通は「若い頃は騒々しいロックを聴いていたけど、歳をとったら静かな曲が好みになったんですね。」と考えるでしょうけど、それは全くの的外れ。何度も書くようだけど、私のロックンロール魂は消えた訳ではありません。
 それどころか、セルフインタビューでも冗談めかして書いているけど、私が一人で悦に入ってパイプを吹いているときに自分の姿とダブらせているイメージというのは、野外フェスのステージの上で、忘我の境地のロックギタリストが愛用のギターから天空へと《音》を紡ぎ出している姿そのものなのです。

 中でも特に印象に残っているのは、中学生の時に観た映画ウッドストックのラストのシーン。大方の観客が帰ってしまった後の閑散としたステージでジミ・ヘンドリックス“Voodoo Child”“Purple Haze”、そして、盛大に歪ませた音で奏でる米国国歌を織りまぜながら展開するインプロビゼーション。国歌を歪ませて奏でることで、ベトナム戦争の泥沼に突き進む中で苦悩する超大国アメリカの姿を描いている、あるいは反戦のメッセージだ、という風に様々な解釈がされた有名なシーンです。
 先日、DVD からそのシーンの音だけをMP3にエンコードして例の iPod に転送したのですが、その演奏時間は私がいつも演奏する“Lament for the Children”とほぼ同じ19分余りでした。一見全く異なる音楽であるにもかかわらず、私はその演奏時間の近似性以上にこの2つの音楽を同じ感性で聴く事ができてしまうのです。特に、“Purple Haze”から続くギターソロの展開はまるでクルンルアー・ア・マッハに登り詰めるピーブロックのバリエイションの展開の様相ですし、一転してインプロを締めくくる最後のゆったりしたメロディーはまさに最後のウルラールってとこ。
 「ジミヘンのインプロビゼーションとピーブロックを同じ感性で聴く」なんてパイパーは他には絶対にいないと思うけど、それが私ならではのバグパイプでの音楽の楽しみ方なんですね。

 まあ、それとは対照的にハイランド・パイプとエレクトリックギターは「どちらも思いっきり大きな音を出そうとする楽器である」ということについては、多分だれも異論をはさむ余地はないでしょう。アコースティックとエレクトリックという違いは別にして…。


 さて、先にも書いたようにジョン・メイオールからフリー、そしてレッド・ツェッペリンの初来日頃までは真面目にロック一筋に歩んでいた私も、その後はロックの王道からは少々離れた道を歩んで来たので、実はZEPの全体像を真面目に把握したのはつい最近のこと。今年の春、息子の高校入学祝いにエピフォンのレスポールもどきギターを買ってやったことがそのきっかけです。
 当初、彼はビートルズに取り組んでいましたが、ある時「ねえねえ、こんなのもイイよ〜」と手許にあった ZEP のリマスターズの CD を聴かせ、「狂熱のライブ」のDVDを見せたところ、簡単に ZEP にハマってしまいました。で、後は親子で一緒になって全てのオリジナル・アルバムを集め、米国Amazonからギタースコアのボックスセットを取り寄せて(何故か、 ZEP のギタースコアってのは国内版は全く見当たらないのです)彼は見よう見まねでコピーを始めたのです。そして、ついに最近になってとうとう禁断のブートにまで手を出してしまいました。アーメン…。(彼は冬休みには郵便局でバイトするとのこと、アハハ…)

 そんな折、まさドンピシャのタイミングでジミー・ペイジ奏法を特集したギター雑誌の増刊号が発売されたのです。それも、なんとペイジの奏法を映像で解説したDVD付きで…。飛びつくように購入するとともに、それからは彼のバイブルのようになったのは言うまでもありません。そして、挙げ句の果てには、親の顔を見る度に「お願〜い、(本物の)レスポール・スタンダード買ってくれ〜!」ってうわ言のように唱えるようになりました。あまりにしつこく繰り返すので仕方なく、部活の夏合宿をキチンと務め終えたところで、彼念願の本物のギブソン・レスポールを買ってやりました。ジミー・ペイジの愛機とドンズバの色柄のものを。

 で、この話しを Jailbird さんに話したところ「森さん、それってお子さんに買ってあげている様に見えて、実は自分に買ってあげているんじゃありませんか?」ってな風に鋭く指摘されてしまいましたが、まさに図星!ですね。
 つまりは「自分で果たせなかった夢を子どもに託す」ってやつ。バカ親の典型。だって、白状しちまうと実はレスポールと一緒にマーシャルのミニアンプまで買ってやっちゃったんだもん。小さいながらもちゃんとあのマーシャルのロゴが入っているヤツ。こうなると、もうバカ親&親バカをはるかに通り越して、親本人が単なるミーハーですわ。


 さて、その DVDでペイジのギターワークを見事に再現して見せてくれていたギタリスト Jimmy SAKURAI さんが率いるバンドが、今回ライブを観に行った“MR.JIMMY”というZEP・トリビュートバンドです。このバンドがどんな演奏をしてどのような評判を得ているかということは、バンドのオフィシャルサイトや、ファンが作っているサイトのレビューを読んでいただくとして、とにもかくにも、この日のライブは70年セットということで、初期の頃の ZEP の演奏を再現したものでした。つまりは、私が30年前、ちょうど今の息子の年頃に体験した ZEP の音を、息子と一緒に体験できるわけです。
 それは、まるでタイムマシーンに乗って過去に遡り、自らの青春時代を息子に見せるかのような、なんとも夢のようでかつ感慨深い体験でした。

 私はこのようなバンドを単なる“コピーバンド”とは呼びたくはありません。やはりまさに“トリビュートバンド”という呼び方の方が似合っていると思います。それは、「自分が好きになった音楽を自らで演奏したり歌ったりしてみたい。」という音楽ファンのごくごく自然な気持ちに素直に従い、同時に血の滲むような努力を経て奏でられるその演奏からは、単なるコピーという枠を超えてその音楽、そのミュージシャンに対する限り無い《尊敬の念》がひしひしと伝わってくるからです。

 私が、“Lament for the Children”を、数ある演奏の中でも一番好みとする Gavin Stoddart さんの演奏スタイルで演奏することを目指すということも、いってみれば“Lament for the Children”という曲、Gavin Stoddart さんというパイパーに対するトリビュート演奏だと思うのです。そういった意味からも、私はこの MR.JIMMY の演奏に強く共感すると共に、深い感動を覚えました。

 MR.JIMMY のみなさん、本当に素晴らしい演奏をありがとうございました。


 ところで余談になりますが、トラッドファンならそれほど ZEP に詳しく無い人でも、ジミー・ペイジが、彼の憧れのギタリストであるバート・ヤンシュのレパートリーであったトラディショナル・チューン(あのアン・ブリッグスサンディー・デニーも歌ってる…)“Black Water Side”を大胆にアレンジして“Black Mountain Side”という曲として演奏していることや、“Battle of Evermore(限り無き戦い)”ロバート・プラントと掛け合いで歌ってるのがまさにそのサンディー・デニーであること位はご存知のことと思いますが、ロック史上最も有名な曲である“Stairway To Heaven(天国への階段)”の歌詞にパイパーが登場しているのは知っていましたか? 日本語訳では「笛吹き」なんて訳されていることがあるので見逃してしまいますが、当然ですが本当の意味はパイパー、つまりハイランド・パイプ奏者のことです。

(前略)
And it's whispered that soon if we all call the tune
Then the piper will lead us to reason.
And a new day will dawn for those who stand long
And the forests will echo with laughter.
(中略)
Your head is humming and it won't go, in case you don't know,
The piper's calling you to join him,
Dear lady, can you hear the wind blow, and did you know
Your stairway lies on the whispering wind.
(後略)

 パイパー森と ZEP との因縁は実はここに潜んでいたのです。…ってのは、ちょっと無理なこじつけか?

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