奥鬼怒三湯と湯沢噴泉塔

 2007年8月に、ケイビング仲間と、奥鬼怒三湯と湯沢噴泉塔を回ったときの記録である。ただし、カッタテの湯は2004年8月に行ったときの記録を追加した。

 女夫渕温泉の駐車場に昼頃着き、昼食をとってから鬼怒川本流に沿って歩き出した。25000地図で見るとカッタテの滝上流に4つほど温泉マークがあるので、それらを探しながら歩いた。カッタテの滝(写真02)のすぐ上、右岸の岩陰に適温のお湯が湧き出しているのを発見したが(写真04)、湯船にするには相当掘らなければならないので割愛して先を急ぐ。それから先も地図に温泉マークが載っているあたりは注意深く探したが、見つけられなかった。

           写真02 カッタテの滝

        写真04 カッタテの滝の湧き湯

 歩道橋のような橋で川を渡り、しばらく歩くと、八丁の湯だ。右の写真が旧館で湯治場の雰囲気が残っている(写真06右)。左の写真はログハウスの新館である(写真06左)。入口付近にハクビシンを飼っていた。

写真06      新館:ログハウス                   旧館:湯治場

 早速日帰り入浴する。滝を眺めながら入れる大きな露天風呂で素晴らしい(写真10)。湯温も丁度良い。続いて、滝の左側にある階段を登って、手すりのついた滝見風呂に入る(写真12)。この手すりは酔客が誤って滝壺に転落しないよう付けたものだろう。ローケーションはいいが、いかにも人工的な湯という感は否めない。

  写真10 大きな露天風呂(景色抜群)

      写真12 滝見風呂

 風呂で火照った体を冷ましつつ、加仁湯の前を通る。どういう関係か春日野部屋の合宿所があった。加仁湯は3階建ての鉄筋コンクリートなので入る気にならない(写真14)。大昔、まだ木造の頃、奥鬼怒沼から下って来て泊まったことがある。

    写真14 加仁湯本館(春日野部屋の合宿所がある)

 更にだらだら坂を登り日光沢温泉についた(写真16)。ここは昔ながらの湯治場スタイルだった。ここも日帰りの烏の行水で露天2カ所に入る(写真18)。右が下の露天であり、左が上の露天である。入浴客は少なかった。

         写真16 日光沢温泉

            写真18 日光沢温泉の露天風呂(左:上の湯、右:下の湯)

 ここから手白沢までは長いので、ザックを本格的に背負い、手ぬぐいを頭にかぶって乾かしながら、自動車道を登ったり・遊歩道を歩いたりしながら進む。行く手の林間に手白沢温泉の建物が見えてきた。玄関の様子は写真20の通りである。今日は泊り客が少ないのかシーンとしていた。

          写真20 手白澤温泉全景

 まず荷物を部屋に置いて、露天風呂(写真22)に入る。露天風呂の底は水色のタイルが貼ってあるので湯がきれいに見えるが、あまり自然感がない。大きなガレ場のある根名草山が見えるのがせめてもの救いだ。次に内湯(写真24)に入る。大きなガラス窓や幾何学的な四角い風呂が、なんともよそよそしく、馴染めない風呂だ。

    写真22 手白澤温泉の露天風呂(底は水色のタイル)

  写真24 手白澤温泉の内湯(観光地の大衆ホテルと変わりない)

 18時頃から食堂で夕食。ここ手白沢温泉はフランス料理で有名な宿なので、どんな料理が出るか楽しみだ。まず前菜(写真26)。次にディナーとなるのだが、ディナーは食べるのに夢中になって写真を撮るのを忘れてしまった。デザートも済んで部屋に引き上げたが、私ごときには旨いとも不味いとも言えない味だった。中華料理のようにすべての料理をいっぺんに並べて、食べたいものを自由につまめる食べ方の方が性に会っている。

 写真26 前菜(ディナーの写真を撮るのを忘れてしまった)

 翌日は残念ながら小雨。手白沢温泉のマスコット犬「クロちゃん」に見送られて出発6:30(写真27)。ポンチョを着て(写真28)、新助沢に沿って登る。手白山の峠に着いたのは8:00。ここからかなり急斜面をトラバース気味に下ってゆく。3つぐらいガレ場を通過したが、一番大きなガレ場はここだ(写真30)。ここには虎目ロープも張ってあるので間違うことはあるまい。

    写真27 マスコット犬の黒ちゃんに見送られて出発

    写真28 小雨の中、ポンチョを着て峠を目指す

        写真30 ガレ場(トラロープに沿って進む)

 その下で傾斜が緩くなり、広場状の斜面を下ってゆくところが間違いやすい。よーく、ピンクテープの目印を追跡してゆこう。9:20、とうとう湯沢に出た。湯沢の渡渉点には虎目ロープが張ってあるので間違うことはないだろうが、川幅が10mもあるので、水量が多いときは引き返した方が良い(写真32)。

       写真32 湯沢の渡渉点についた(トラロープが目印)

 ここで湯沢の左岸から右岸に移り、湯沢沿いの林の中を歩いてゆく。ところどころ湯が湧き出して黄色に変色したところもあるが、湯船になりそうな窪地もない。「あら、もったいない」と思いながら通り過ぎるだけ。20分ほど歩くと湯沢噴泉塔に降りるガレ場の上につく。崩れやすい岩屑を落とさないよう気を付けながら下ると(写真34)、湯沢に到達する。最後の部分は足場が悪い(写真36)。

 写真34 噴泉塔のある滝への降り口(ガレ場なので崩れやすい)

       写真36 降りてきたルートを見上げる

 川岸についたら今度は岩場を下流側(左側)にトラバースする(写真38)。この岩場は温泉が湧き出しているので岩盤浴ができるほど暖かい。続いて湯沢を右岸から左岸に渡る。当方が行ったときは写真40の地点が沢水にぬれずに渡河できる唯一の点だった。一度大水が出ると沢の状態は大きく変化するので、改めて全体を見直して渡河地点を決める必要がある。

       写真38 この岩場を左にトラバースすると岩盤浴ができる

           写真40 湯沢を右岸から左岸に渡る

 沢を左岸に渡ると真ん丸の甌穴があり、近くの岩盤から湧き出した硫黄泉がたまっている(写真42)。まったく自然の妙に敬意を表したくなる。この湯にも入りたいが直径が小さすぎて尻しか入れない。そこを通り越すと、いよいよ湯沢噴泉塔の前に9:50到着(写真44)。噴泉塔の下のルンゼ状になった岩のくぼみにお湯がたまっているので、早速風呂に入る(写真46)。

       写真42 甌穴にたまった温泉

      写真44 湯沢噴泉塔のある滝(この滝だけでも風格がある)

     写真46 噴泉塔下のルンゼに溜まったお湯

 我々が行った日はあいにく小雨だったので、ルンゼ状の湯船に周囲から水が流れ込み、湯船の上は噴泉塔から流れ下ったお湯で熱かったが、湯船の底は冷たかった。よくかき回して湯に浸かろう。この湯のロケーションは野趣満点で、野湯ファンにとってはたまらない。

 噴泉塔の湯を満喫したら、湯沢のゴルジュを遡行して(写真48)、広河原温泉に向かう。沢水が膝以上あったら遡行は避けて、遊歩道を使った方が安全である。ただし遊歩道は80mぐらいの高巻きなので、かなりのアルバイトである。

     写真48 噴泉塔下流のゴルジュを遡行する

 ゴルジュを抜けるとすぐ遊歩道と合流する。遊歩道と言っても毎年の崖崩れで岩屑が散乱し歩きにくい(写真50)。湯沢の丸木橋もほとんど流されていて渡渉の繰り返しである(写真52)。

  写真50 遊歩道は岩屑で一杯(歩きにくいこと請け合い)

  写真52 丸木橋はすべて流されていて渡渉の繰り返し

 遊歩道は歩きいにくいので沢筋を進むことにした。それから湯沢を嫌になるほど下ってゆくと温泉のある広河原に達する(写真60)。広河原には、川沿いに石で囲んだ野湯と、山際にブルーシートで湯をためた野湯があるが、好きな方に入ろう。川沿いの石で囲んだ野湯は石のすきまから沢水が入るので、ある程度補修してから入った方が良い(写真62)。風呂から出たら昼飯作りである(写真64)。ここでゆっくりして、いよいよ平家平の出口目指して遊歩道を歩き始める。

           写真60 広河原全景

     写真62 水漏れを補修して、川沿いの野湯に入る

         写真64 餅を焼いて昼飯を作る

 今回はケイビング仲間との野湯行なので、洞窟らしきものがあると、どうしても本物の洞窟かどうか確かめたくなる(写真66)。そんなこんなで時間を取られ、平家平についたのは15:00になってしまった。女夫渕温泉まで引き返して車で帰路についた。途中、川治の共同湯:薬師の湯(写真72)に立ち寄って、鬼怒川温泉駅で相棒と別れた。

写真66 洞窟っぽいものがあると、どうしても調べたくなる

    写真74 帰りに立ち寄った、川治の共同浴場:薬師の湯

 なお湯沢遊歩道は、2007年でこの記事のごとき状態なので、最近の情報(2016年のヤマレコのルポ)を見ると、現在ではほとんど廃道になっているそうである。

https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-855567.html


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