カルチャーギャップ

 大学の同期でメーリングリストを作っておしゃべりを楽しんでいる。そこで日本と外国の文化の違いが話題になったことがある。

話題提供(K君)2011年10月
 7月の山開きの日に同期と一緒に富士山に登った時、フランス人の飛び入りがありました。彼とはそのあとも、秘湯を訪ね、周辺の山にも登りました。彼と何日か付き合ってみて、いくつか、文化の違いを感じたところがありましたので紹介します。

(その0)富士山の頂上についてご来光を迎えたとき、彼が起立して日本の国歌「君が代」を歌い出したのに驚いた。彼としては日本一の山頂で日本に敬意を表するために歌ったのだろう。我々は座ったまま聞いていた。その返礼に私が「フランスの国歌を歌う」言ったら彼は起立したが、我々が座ったままだったので、バツが悪そうに座ってしまった。そして我々は座ったまま「ラ・マスセイエーズ」を歌った。これは国歌に対する西洋人と日本人の意識の差ではなかろうか。というより、日本でも戦前教育では国歌は起立して歌うと教えていたのではないだろうか。戦後の民主化教育の結果、起立して国歌を歌う・聞くという作法がすたれたのではないか。

(その1)
 富士山で使った金剛杖を持って新宿まで帰ってきたとき、駅のコンコースの中に入っても金剛杖を水平に持っているので危ない。「Please vertical」と注意した。イギリス紳士はこうもり傘を垂直にぶら下げると聞いていたのだが。フランスの青年となるとダメかね。

(その2)
秘湯を尋ねたとき、某JR駅の待合室は大きなガラス張りの明るい待合室だった。秘湯に行くバスが来るまで待合室で待っていたら、彼が、「こんなキレイなガラスなのになんで真ん中に張り紙するのか」と呆れ顔でつぶやいていた。そこには「待合室内携帯使用禁止」と書いてありました。よせばいいのに、私が「そこが一番目立つからでしょう」と言ったら「日本人の美意識は理解できない」とでも言いたいような悲しい顔をしていました。

(その3)
 秘湯に着いて、最初は大きな野天風呂をかねた温泉プールに入りました。ここは宿側も水着着用と張り紙してあるので何も齟齬はありませんでした。次に、いろいろ凝った内湯に連れて行きました。水着をつけたまま入ろうとするので、ここは裸ではいるのだと引き止めたが、彼にとっては水着着用と裸で入る場所の区別が分からないようだった。これはスリッパをどこで脱ぐかと同じで、外国人には難しそう。

(その4)
 打たせ湯を案内したときはシャワーと思い込んでしまい、早速、シャンプーで頭を洗い出した。流しが白い泡で一杯になってゆったり流れている間、他の客が来ないかと気が気でなく、当方は、一秒千秋の思いで時間が経つのを待っていた次第。

(その5)
 その宿は安政年間に立てられた木造の一軒宿なので、彼の頭がつかえるほど天井も低く、廊下も黒光りしていた。そのたたずまいに彼は「ワンダフル」の連発。ここは日本式のトイレしかないので、彼の驚く顔が見たかったのだが、トイレだけは半分ぐらい西洋式にしてあった。残念。30年前に来たときは全部日本式だったのに。

(その6)
 食事のあと、彼が、お茶ではなくコーヒーをもらえるかと宿の人に聞いていた。宿の人が「OK、ブラックか」と聞いて、砂糖もミルクも入っていないコーヒーを持ってきてくれた。そしたら彼が、「シュガーは」と言い出すので、ブラックでいいと言ったじゃないかと言ったら、フランスでは「ブラック」とは「ミルクを入れない」という意味とのこと。

(その7)
 日本を発つ前の日、ビヤホールでお別れ会を開いた。閉店を知らす「蛍の光」がかかったら、フランスでも最後に蛍の光を流すとのこと。文化に関しては誇り高いフランス人がよくイギリスの音楽を取り入れたものだと、新発見をした感じ。


コメント(NK君)
 K君のカルチャーギャップのコメント,”日本の常識、世界の非常識”が見えて面白かった。

その1:金剛杖を水平に持ったについて
 日本人の若者にもそのような光景は見かけますので、フランス人一般ではなく、個人的問題と思います。確率の違いはあるかもしれませんが。

特に、その2:美意識について
 フランス青年に全く同感です。美意識・美的感覚はカルチャーですね。

その5:安政年間の木造一軒宿について
 美的感覚は個人的なものなので,一般論で言うことはできませんが,それにしても日本人と西洋人で古いものに対する美的感覚の違いを感じます.

その6:ブラックコーヒーについて
 ブラックの言葉の意味を考えたら、確かにフランス青年の言うとおりと思います。おかしい使い方の外来日本語がたくさんあります。特に、日本語としては非常に狭く限定した意味に使う傾向がありますので、外国人との会話では外来語は日本語と意識する必要がると思います。

その7:蛍の光について
 音楽とくにメロディは国際的に受け入れやすいように思います。


(K君)
 なるほど、外来語は日本に入ると意味が変わってしまうことがあるので、「外来語は日本語と考えたほうが良い」とは鋭い洞察。そのよい例としては、どんなものがありますかね。


(NK君)
 さて、ご質問の件ですが、「外来語は日本語と考えたほうが良い」というのは私の洞察ではなく、英会話に関する何かの本に書いてあったことで、そのとき「なるほど」と思いました。K君の”ブラック”の話がちょうどそのよい例と思ったただけで、日頃その例を感じているわけではありませんので、すぐには少ししか思い付きません。
外来語辞典をみればたくさんあると思いますが、私の手元にはありませんので、下記でご勘弁願います。

例1:セール:安売り(bargain saleの意)
例2:ファッション:服装/fashon: 流行,流儀など
例3:マナー:行儀・作法/manner: 行儀・作法の他に,方法,態度,風習など
例4:モール:ショッピングモール(歩行者専用の商店街)/moll: 遊歩道
例5:デパート:百貨店(department store)/deaprtment: 「百貨店の売り場」の意味もあるが,本来の使い方は組織の「部門,部,課,省,局」


(K君)
変質外来語のサンプル有難うございます。
「サービス」なんかも変質外来語かも。日本では→まける、本来は→義務以上の奉仕
みなさんも思いついたものを紹介してください。


(IC君)
変質外来語(?)を探すのは頭の体操になりそうですね。以下、思いついたもののみ。

・コマーシャル
 よく宣伝のことをコマーシャルと言いますが、commercialは“商業上の”“営業上の”の意味。日本で表現するコマーシャルは英語では “Advertisement”又は単に“an ad”です。
・PR
 コマーシャルのついでに、日本では宣伝することをPRと言いますが、“public relations”とは企業が一般社会との良好な関係を持つための広報活動のことを言い、日本で理解されているPRとは異なります。
・バイキング
 食べ放題の料理を“Viking”と言いますが、英語では“buffet”ですね。
・カンニング
 英語の“cunning”は “ずる賢い”であり、日本語のカンニングは“cheating”とか“cribbing”ですね。
・ゴージャス
 日本でゴージャスは“豪華”“リッチ”の印象ですが、英語の“gorgeous”にも豪華な意味は含まれますが、“素晴らしい”,“目が覚めるような”といった広い意味があり、その点で変質外来語のように感じます。

とりあえず思い付いたのをあげてみました。


(NS君)
 私の経験で今でも気になっていることをこの際紹介して見解を頂きたく。
”sexy data”
 これはドイツ出身で30年以上オーストラア・メルボルン在住の極めて謹厳で優秀なエンジニアから言われたものです。

 状況は技術問題で1年にも及ぶ原因解析と再現実験の最終段階で期待通りの再現データが出た時に彼が言ったと理解しています。と言うのは場違いな表現と思ったもののそれ以前に promising, fine, great 等だったのが最終的に sexy となったのでそれに類する実験結果への最上級の評価表現と思い込んでいました。

 今回、皆さんの例を見ているうちに私の認識で良かったかいささか疑問をも持ちました。その後こんな例には遭遇していないので皆さんの経験やご意見を伺いたく紹介した次第です。


(NK君)
 私の見解では,ニュアンスは多少異なりますが,NS君の解釈でよいと思います。
 外国人の芸能人のインタビューやドラマの中で褒め言葉として、性的対象でないことにも使っていますので、欧米人は深い感動や満足感は sexy と感じるのかもしれません。形容詞,副詞の感覚は日本人と外国人で異なるのは当然のように思います.
セクシーも日本語では狭い意味に使う例と思います


(S君)
先週 仕事でcebuに行っておりまして、コメント遅くなりました。
さて、早速ですが小生が気がついた変質外来語は次のようなものです。

①まず一番良く使うのが、mansion ですね。
 I lived in a mansion .と言ったらびっくりしますね。大邸宅だから。
< a condominium>

②それから 野球のnighter
 状況によるのでしょうが 会社で言うと、夜の会議に間違われますね。
< a night game >

③hearing test と直ぐ言ってしまいます。
 耳鼻科に行くのではない。
<Listening comprehension test >

上記②③などの英語は誰が作るのでしょうね?
 感心します。マスコミの人だと思うのですが、これからもあいまい外来語は出現するでしょうね。
NS君の言われている”sexy”は 小生もよく若い人に<かっこいい>と言う意味で使います。決してセクハラなどになりません。
”cool"も良い意味で最近使いますね。

 でも小生が気になっているのが日本の教育現場で使われている外国人名とか歴史上起こった名前です。
海外出張時のスーツケ-スにいつも世界史年表を入れて置くのですが、その国を訪問すると、その国の歴史を直ぐに頭にぶち込んで置くのです。Dinnerなどで、歴史の一端を話すと先方は驚いて尊敬の念を持ってくれるのです。

 これで拙い英語と稚拙な業務知識を補完しています。このために人名や事件の英語読みを知らないと困るのです。例えば孔子とか、ひどい例ではアメリカの南北戦争。これは彼らは南北戦争などと言わない、civil war です。100年戦争とか北方戦争、ナントの勅令などはなんと言うのかしら? このまま英語に変換していいのかしら?

 でも小生の興味はK君ご指摘の国それぞれの文化の違いによる行動様式の違いです。

 昔の話ですが jakart で、ペチャという”自転車の横や後ろに一人乗りあるいは二人乗りの seat がついている”のが走っていますね。丁度サイドカ-のように。アレを観て横あるいは後ろに乗ってみたくなる人は国を超えて結構いるのです。

 しかし、ある若いアメリカ人は自転車を漕ぐ運転手を後ろに乗せて、自分が(約200-300m)一生懸命にこいで、楽しんでいました。後ろに乗った運転手は恥ずかしがって頭を掻き掻きしていました。周りの人間は大笑いでした。そのアメリカ人は運転手に金を払っていました。全ての人がそうでないにしても、アメリカ人の発想は我々の想像を超えた事をやりますね。

 長くなりました。御免なさい。この辺で終わりとします。


(K君)
 確かにS君の指摘のとおり、かなり意味が違って使われてますね。
辞書で引くと、mansion は大邸宅、hearingtest は聴力検査だし、sexy には素敵なという意味は載っていない。南北戦争の英語表現が civil war (内戦)とは初耳。誰が南北戦争という日本での呼び名を発明したのだろう。

単語の意味の違いもさることながら、私が長年疑問に思っているのは
1.あて先の書き方
 西洋では、番地、町、市、国となるが。日本では逆。
まず大きなところから小さなところへ向かって現したほうが概念が掴みやすいと思うのだが。
日付表記についても同様。
ゆく秋の 大和の国の 薬師寺の 塔の上なる ひとひらの雲
を西洋人が訳したらどうなるのか知りたいところだ。

2.カレンダーの書き方
1.西洋では縦書き(日付が縦に並ぶ)のカレンダーもある。
2.横書きでも、西洋では月曜日から始まる、日本では日曜日から始まる。

1.については、私にとっては想像を絶するもの。
2.については、働いた後の休息の日が土日(週末)と考えれば、
 週は月曜から始まると考えたほうが理にかなっている。
 日本では誰がこういう表記の仕方を最初に考えたんですかね。

外国のカレンダーを見てると国民の祝日(赤い日)が少ないですね。
日本はこんなに祝日を増やしてしまって、国際競争力に影響しないのか。


(NK君)
1.あて先の書き方
 確かに自分を原点に外に向かって表示することと日本の表現は逆で、地図で場所を探すには日本の表現の方が合理的と思いますが、外国からの横書きの手紙を反時計方向に90度回転させると日本の表記になりますので,合理性を考えてそうしたかどうかは疑問に思います。

2.カレンダーの表記
私が使っているビジネス手帳は月間カレンダー式でそれは月曜から始まっています.


(IN君)
 アメリカには南北戦争以外に大きな内戦はないので ”The Civl War”といえば 南北戦争のことになります。他の国では何と言っているか調べていませんが 歴史の長い内戦など沢山あった多くの国ではアメリカの南北戦争をCivil War とは言わないのではないでしょうか。勝手な想像ですがヨーロッパなどでも "南北戦争"に近い意味の言葉を使っているのではないでしょうか。 

 明治維新をアメリカ人は Civil War と言っていますから civil war はアメリカ人にとっても ”内戦"の意味しかありません。

宛名の書き方

 K君のおっっしゃるとおりですが受験勉強時に、ある英語の先生が英語での封筒の簡単な書き方を教えてくれましたので、御存知かと思いますが御紹介します。
 宛て先、差出人をかいた切手を張った日本の縦型封筒を時計回りに90度回しますと 洋封筒のフォーマットになります。やってみてください。
- 縦封筒では切手の位置が左上でしたが 回転で 右上にきます。
- 送り主の姓名が小さい字で 名、姓の順で 左上にきます。
- その下送り主住所は番地、町、区、市、県の順になっています。
- 宛先の姓名が 封筒中央あたりに大きな字で 名、姓の順できます。
- その下に 宛先住所が 番地、町、区、市、県の順になっています。
どうですか。日本の縦封筒は 欧米の横封筒と全く同じフォーマットであることが判ります。


(K君)
 日本の縦書きの封筒を右に90度回転すると西洋式の宛先の書き方と同じになりますが、しかし、読む方向が逆なので、書き方の様式は真逆といえるのではないですか。

 大きな内戦が1回しかない国ではThe Civl Warでも通じるが、内戦の繰り返しのような国ではそれでは通じない。なるほど。


(H君)
「待合室の透明なガラスに張り紙」は彼の主張にも一理あります。外国人とのカルチャ―ギャップは自然かもしれません。私の日系2世の姪が私の家にホームステイしましたが、YES・NOがはっきりしている印象はありました。
ところで、中国の高速鉄道事故が、大きな問題となり、今も信号機のトラブルが頻発している様です。
日本の新幹線は開業以来事故はゼロ。これこそカルチャ―ショックではないでしょうか。

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