チグハグな富士登山

 2016年、7月6~7日にかけて富士山に夜行登山をした。学校が夏休みに入ると夜行登山はものすごい行列になるからだ(写真01)。あちこちで思わぬハプニングがあり、なんともチグハグな富士登山となった。

      写真01 数年前の7月20日ごろ富士山に夜行登山したときの八合目の混雑

 R246の市ヶ尾バスターミナル15:20発の河口湖行高速バスに乗ろうと思って出かけたら、バス停に「河口湖行きは5/8で運行を中止しました」との張り紙。それなら富士急行のHPのバス時刻表からも消しておけと怒り心頭に達した。

 仕方ないので鉄道に切り替え、東急で長津田に行き、JRで八王子に行ったら、中央線は阿佐ヶ谷駅での人身事故のため、全線で運行をストップしていますとのこと。イライラしながら待っていたら、幸いこれは20分ほどで動き出した。

 大月で富士急行に乗り換え、富士山駅で最終の登山バスに乗り換えた。乗客は私一人。いつもなら外国人が多いのに、この変化には驚いた。それにしても富士吉田駅を富士山駅などとけったいな名前に変えた富士急行が憎らしい。

 五合目からゆっくり歩き出し暗闇の中を登ってゆくと、他の登山者に次々と抜かされてゆく。日本語で声をかけると外国語が返ってくる。暗いので顔は分からない。次は英語で声をかけたら日本語が返ってきた。なんとも落ち着かない気分で登る。

 六合目の登山指導所ではいつも「一人の神風登山は危険なのでやめるよう」指導を受けるので、今回は最初から「もう12回目の登山だ」と申告する。ここを過ぎると、満天の星を背景に七合目の山小屋群まで続く大きな斜面に出る。森林限界を超えたので風がかなり強い。

 七合目の最初の小屋の前で休んでいるのは大半が外国人だ(写真02)。この連中はどこから湧き出してきたのだろう。バスには乗ってなかったし、五合目の休憩所にもいなかった。

           写真02 七合目の小屋の前で休んでいるのは外国人ばかり

 七合目に入ると、すぐに岩尾根の登りになる。そんな中を小学生を連れた親子が下ってくる。登りに10時間もかかったので、こんな時間になってしまったとのこと。小学生には「よく頑張った」と声をかけてやりたいが、親の頭を殴りつけてやりたい感じだ。

 最後の山小屋に夜食を食べるため入ったら、たまたま隣に外国人の親子がいた。話したら、ポーランドから2週間の予定で日本旅行に来たついでに富士登山しているとのこと。小さな子を連れているので「何歳か」と聞いたら8歳とのこと(写真04)。「Great」と言ったら、お父さんとお母さんはすぐうれしそうな顔をしていたが、子供は何の変化もなかった。まだ英語を知らなかったのかも知れない。

  写真04 本八合目の最後の山小屋に入ったとき出会ったポーランドからの親子

 8合目から上はものすごい風で、前傾姿勢をして登っていても、ときには後に押し戻されるほどの風が吹いてきた。風速20mはあるだろう。おかげで、チベットで買ったつば広の帽子(写真05)も飛ばされてしまった。不思議とキャップランプだけは、飛ばされた瞬間に手元に落ちてきたので、歩くことに支障は出なかった。

写真05 この帽子が風で飛ばされた

 頂上直下の鳥居付近でご来光になってしまった。登山者の動きが止まり、赤い朝日に染まっていた。頂上の神社に着いたらまだ神主が登って来ていないらしく扉は閉まったまま。おかげで高齢登拝者の記帳ができなかった。記帳すると、お神酒で祝って、記念の扇子をくれるのだが(写真06)。

    写真06 富士山頂浅間神社で高齢登拝者にくれる記念の扇子

 今日は風が強いので恒例のお鉢回りはせず、風下の御殿場口を下ることにした。ガタガタ下ってゆくと小屋が現れたので、太郎坊のバス時刻を聞いた。「太郎坊にはまだバスが来ていない。9日からだ」とのこと。そうか静岡県側は登山者が少ないので、バスの運行開始も遅いのか。それでは太郎坊からタクシーで御殿場まで行かねばならない。タクシー会社の電話番号を教えてもらう。

 さらに下り、宝永火口のふちを通って行ったら、富士宮口への分岐点があった(写真08)。ここからなら1時間ちょっとで富士宮口五合目バスターミナルに着くはず。「富士宮口の方が御殿場口より登山客が多いので、バスも運行してるだろう」と勝手に思い込んで、富士宮口へルート変更した。

写真08 運命の宝永火口の縁:左矢印の方に進めば太郎坊、右矢印の方に進むと富士宮口五合目

 富士宮口五合目のバスターミナルに着いたらターミナルは閉まっていた。売店で聞いたら、ここもバスの運行は9日からとのこと。頭をガツーンと叩かれた感じだが、タクシーを呼んで下るしかない。ここから富士宮駅までは、太郎坊から御殿場駅に下る倍ぐらいの距離がある。よりによって、一番最悪なところへ飛び込んでしまった。

今回は、なんともチグハグな富士登山だった。

 

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