音楽とはおよそ無縁の生活を送っている当方が、柄にもなく大磯まで、湘南SPレコード愛好会主催の「古いレコードの鑑賞会」に出かけました。朝日の神奈川版に紹介記事が載っていたからです。
今回の出し物は、岡田則夫さんという人が講師で、岡田さんが収集した神奈川県各地のご当地ソングを古いレコードで聞くというものでした。装置は、プレーヤーにアンプをつけたものと明治40年製の蓄音器。明治40年製の蓄音機は手回しで、回転数調節機構もあり、かなり大きな音量でした。会場はレトロな喫茶店という感じ(写真1)。
写真1 レコード鑑賞会会場
レコードはおおむね昭和初期のものが多かったです。そのころの男性歌手はみなアナウンサーのような声で言葉も明瞭に歌っているのが印象的でした。男性歌手2人で歌っている横浜行進曲がかかったときは、1番・2番を別の歌手が歌っているのに気が付きませんでした。3番を合唱で歌ったので複数で歌っているのに気が付いたほどです。
聴衆は80代が大半。みなさん静かに座ってレコードを楽しんでいましたが、いずれも古いレコードには一言も二言も持っているという感じでした。驚いたのは、横須賀の軍港小唄をかけたとき、ある老人がすかさず「それは回転数が違うのではないか」と言っていました。操作者が78回転ですと言ったら、それは80回転で聞くレコードのはず。レコード盤に回転数が書いてあると思うのだが、と言っていました。78回転と80回転の音の違いとテンポを聞き分けるとは驚きです。私には不可能。
変わったものでは、江戸川乱歩が招かれた結婚式で「城が島の雨」を歌っているレコードがあったことです。多分、結婚式の参会者にだけ配ったものと思われますが、参会者の子孫の誰かが、オークションにでも出したのではないでしょうか。全く自己流で気持ち良さそうに歌っていました。
余興で、戦前の神奈川県選出の代議士:小泉又次郎の国会演説(S12 年)のレコードがかかりましたが、漢文調の演説でなかなか聞かせる内容でした。昔の代議士は演説がうまいですね。その演説の最後に、「レコード時間もあるのでこれで終わります。さようなら」という下りがあったのでびっくり。昔の国会は演説を弁士の意志により録音することができたようです。今の国会は演説を録音することは許してないですよね。
最後に蛇足を一つ。西洋の科学技術に関しては、中国より日本の方が先に文明開化したので、日本で漢字に翻訳された技術用語が中国語にかなり入っています。しかし蓄音機は中国語にはありません。蓄音機と言うと「音を蓄える機械」ということになるので、実態とは合わないことに中国人が気付いたからでしょう。中国語では「拾音機」と呼んでいます。
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