もう版権が切れた西部劇10作が入ったDVDが1680円で売り出された。一作168円なら安いとばかりに、内容もよく確認せずに買い求めた。ほとんどが白黒映画の中、一作だけカラーの作品が入っていた。なんと、かの有名な映画「シェーン」である。カラーなのにもう版権が切れたのだろうか。まあそんな詮索はさておいて、数十年ぶりに見たシェーンでは考えさせられるものがあった。
大昔、劇場でシェーンを見たときは、ならず者を流れ者のガンマンがやっつける、単なる勧善懲悪の講談だと思っていた。しかし今回見たら、土地の所有権の是非を問う、
極めて社会性のある作品だと気が付いた。
ストーリーは次のとおりである。ある牧場主が牛を放牧しているところに農民が住み着いて農業を始めた。牧場主が放牧の邪魔だからと、荒くれのガンマンを雇って農民を追い出しにかかった。そこに流れ者で恐ろしく腕が立つガンマン:シェーンが農民の側について、牧場主と闘うというものである。
それぞれの側の言い分は以下のとおりである。
牧場主:
インディアンを追っ払って安全な土地にしたのは俺たちだ。だから出ていけ。
農民:
放牧より農業を営んだ方が土地の生産性はずっと高い。だから農業をすべきだ。
それぞれの言い分は、それなりに一理あるが、一番最初にここを使っていたのはインディアンということになるので、インディアンに返すのが筋という理屈も成り立つ。
しかし、インディアンが最初にこの土地を使いだしたとしても、インディアンがこの地に来る前からこの土地は存在していた。人類誕生の前から存在している物に所有権を主張するのはおかしい。
シェーンの作者はこの点について問題提起しているのではなかろうか。ここまで遡って考えると、国際法もおかしなところがある。海洋法も見直さなければならない。
上の話とは関係ないが、10作で1680円の戦争映画版も買った。戦争映画と西部劇を見比べると、戦争映画はかなり娯楽性を重視したフィクションが多く、粗製乱造という感じがする。それにひきかえ、西部劇はかなり時代背景を忠実に表現している。
ある戦争映画(重慶に逃れた国民政府軍を米空軍が支援するため、日本軍の軍用列車を空襲する)では、軍用列車に乗って対空機関砲を撃つている兵隊が、ドイツ軍のヘルメットをかぶっている、などなど。
一方、ある西部劇で、鉄道敷設のため牧場の一部を売らないかという話が舞い込むが、牧場主が断固として拒否する場面の背景に、鉄道建設の工事現場が写っている。その工事現場で働いているのは中国人の苦力である。話の本筋には関係ないが、史実を忠実に再現しているところなど、西部劇は丁寧に作られているという感じがする。
(執筆時期不明)
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