奥鬼怒:湯沢噴泉塔

 2004年8月、秘湯に入る会の相棒と、塩原にある甘湯と奥鬼怒の噴泉塔を訪ねた。
初日は塩原の塩釜から登って甘湯沢源流近くの野湯:甘湯に入った。甘湯付近の林道は荒れており倒木もあった。写真01-1あたりから沢筋に入ると甘湯がある。甘湯の湯船は写真01-2のとおり。川原そのままという感じである。ここはアブが多いので、相棒が虻よけの新兵器を持ってきていた(写真01-3)。甘湯は何度も訪れたいと言うほどの湯ではなかった。

     写真01-1 この標識のあるあたりから沢筋に入る

写真01-2    甘湯は河原の一部                   甘湯の湯船

写真01-3        アブよけの新兵器

 そこから林道を通って新湯に出て、日塩有料道を通って奥鬼怒に入り、川俣温泉の間欠泉を見て、女夫淵温泉の駐車場についた(写真01-4)。ここで車中泊。

         写真01-4 女夫淵温泉の駐車場

 翌日は女夫淵温泉を早朝に出発した。5:30起床。相棒がベッドをたたんでいる間に朝食の支度にかかる。天気は曇で、見上げる山腹は途中 から雲に隠れているが雨は降っていない。8:00出発。川俣から山王林道に入り、じきに湯沢林道入口に着いた。湯沢林道入口のゲートの鍵(写真02)はい ろいろ知恵を絞ったが開かなかったので、車を入口においてあとは歩きになった。

      写真02 山王林道から湯沢林道への入り口
 20分ほどで湯沢への下降点のある看板についた。噴泉搭まで1時間20分と書いてあるがこれは無理だ。8:40下降開始。湯沢への下降路はかなり荒れていた。所々、立派な階段や手すりが見えるので、道を整備した後に大雨で土砂が押し出したのだろう。 湯沢の堰堤のある広い河原(写真04)には8:55についた。

            写真04 湯沢川に降りたところの堰堤

 ここで相棒は徒渉用の靴に履き替え。当方は長靴にはき替えた。川は浅いので膝までの長靴で十分。川を徒渉し対岸に渡ったが遊歩道への登り口が見つからない。しかたないので河原を遡行して上流に向かった。すぐに河原も狭くなり徒渉を繰り返すことが多くなった。このままでは時間ばかりかかる。しばらく進むと左岸の大きな岩小屋に、焚き火の跡と、測量用の杭が置かれていたので、工事関係者が利用するなら遊歩道は近いはずだと勘を働かせ、その後ろの薮を漕いで(写真06)斜面を登ったら遊歩道に出た。

        写真06 藪こぎして遊歩道へ
 遊歩道に出るとスピードが桁違いに早くなった。遊歩道も徐々に沢スジに降りて行き最初の橋を渡る。ここから先は沢を何度も渡り返し、その都度かなりの高みまで登るので、結構なアップダウンがある。この夏の増水で橋が落ちているところが多くなった(写真08)。その都度、徒渉を繰り返す。

        写真08 橋はほとんど流されている
 10:15、やっと広河原に着いた。ここにはコンクリートの源泉槽があり、そこから熱い湯がザーザーと
流れ出していた。ポンプの音も聞こえなかったので自噴だろう。その脇にはブルーシートの湯船が2~ 3つできていた(写真10)。

         写真10 広河原のドカシー

 広河原には噴泉搭まで1600m、川俣まで3300m の道標が立っていた。この噴泉搭まで1600mという のが曲者で、この先でえらく時間がかかった。湯沢は屈曲が多く、右岸からの流入沢も大小いろいろあり、とうとう25000地図と現在位置の対応が取れなくなった。まだ読図力が足りないか。

 噴泉搭まで500mと言う地点で右岸の崩落沢から湯が流れ下っているのを発見。50mほど登ると倒木でせき止められた丁度良い湯だまり(蟹場沢の湯:写真12)がある。その上流10mぐらいの岩の斜面から湯がさかんに湧き出していた。湯気が山腹に広がり絵になっている。

           写真12 蟹場沢の湯
 倒木の湯だまりに早速入浴。入ると底の沈殿物がもわーっと湧きあがりあまり気分は良くないが、すぐにお湯に流されて透明になった。ちょうど一人分のスペースがあるが、浅いので寝湯する必要がある。2人で交互に入浴し、お互いに記念写真を撮りあう。

 もう12:00に近い。先を急がないと。湯沢沿いに少し進むと木の梯子を降りて河原にでる。噴泉搭まで 300mという道標が建っている地点(せせらぎの湯)に着いた。12:05。付近一体は硫化水素の匂いが漂っている。太いパイプから熱湯源泉が湧き出しているコンクリートの枡があった。ゆで卵ができると紹介されているところだ。泉温は 79.4℃(写真13)。ゆで卵は帰りに作ることにして先を急ぐ。

       写真13 せせらぎの湯(泉温79.4度)

 噴泉搭まで200mという道標のあるところから急な階段の登りになった。嫌になるほど登る。12:30ついに噴泉搭のあるゴルジュが見えた(写真14)。

         写真14 噴泉塔のあるゴルジュ
 岩体を深く削って落ちる3段の滝で、中段の滝の左岸に温泉が湧き出ている。白い滝、青い滝壷、黄色の湯の花、周辺の緑が一体となって素晴らしい景色だ(写真16)。この景色は苦労しても一見の価値 がある。

          写真16 噴泉塔のある滝壺
 噴泉搭は中段の滝の左岸の岩壁の途中に成長していた。高さ1mぐらい。先端はかなり尖っており湯が噴出す穴もみえたが、現在は先端からは湯が出ていなかった(写真18)。

        写真18 噴泉塔(高さ1mぐらい)
 滝壷のまわりでひとしきり写真撮影に精を出し、それから入浴可能なポジションを探す。噴泉塔の真下に大きなルンゼ(岩の溝)があり、そこに白濁したお湯がたまっている(写真20)。野湯として最高 のポジションだ。早速、裸になって足を踏み入れる。

      写真20 ルンゼに溜まった湯
 湯船の大きさ・深さは申し分無いが、暖かいのは表面だけで下はかなりぬるい。噴泉搭からしたたる湯は熱いくらいだが、ガレ沢からの冷たい水が流れ込んでいるのが原因だった。このところ雨が多かったためだろう。運が悪い。それでも、ゆっくり噴泉搭の湯を楽しんでから13:40発。

 帰りはゴルジュを遡行して戻ることにした。ゴルジュに入る直前に直径1mぐらいのまん丸な湯船があった(写真22)。しまった、これに気がついていれば間違いなく入ったのに。この湯は、川の甌穴に温泉が流れ込んだもので、甌穴の位置と温泉湧出箇所 がうまく一致したためだ。自然の妙に驚く。

            写真22 甌穴の湯

 いよいよゴルジュの通過。右岸の一枚岩の斜面にトラバース用のロープが張ってある。見た目には足場も少なく長靴でトラバースできるかなと不安だったが、案外簡単にトラバースできた(写真 24)。

         写真24 ゴルジュのトラバース
 そのゴルジュを抜けたところは、噴泉搭へ200mという道標のあるところだった。遊歩道となっている長い階段の道は、たった5分で抜けられるゴルジュを避けるための高巻としては割に合わない。ここはゴルジュを突破すべきだ。
「噴泉搭まで300m」の道標のある所で昼食。相棒が熱泉に玉子を入れて半熟の温泉卵を作ってくれた。熱くてうまかった。熱泉からの湯気が風向きにより漂ってきて、一瞬からだが暖かくなる。もっとゆっくり休みたいところだが、先があるので14:30出発。

 帰りは遊歩道をしゃにむに飛ばして下った。遊歩道は湯沢との出会いの堰堤のある河原まで降りていた。出口は河原からチョット引っ込んだ林の奥なので来る時に分からなかったようだ。良く見ると入口の木にピンクのテープがぶら下がっていた。これを見落とすとは、当方もずいぶん腕が鈍ったようだ。 15:40堰堤着。

 帰りは山王林道を日光側に抜けた。山王峠近くは濃霧に包まれ、見通しが利かないので怖い。でも相棒は時速40kmで走っていた。こういう時の運転も慣れているのだろう。濃霧の時は、木の下の道路が濡れ、木がないところは乾いていた。多分、葉についた霧が水滴となり、それが滴り落ちるからだろう。雨降りの時と反対だ。一つ発見した。

(コースタイム) 湯沢林道ゲート前8:20→案内看板8:40→8:55湯沢出合い9:05→10:15広河原の湯10:30→崖上の湯10:45→蟹湯沢の湯(入湯)11:50→せせらぎの湯12:10→12:30噴泉塔の湯(入湯)13:40→14:00せせらぎの湯(昼食)14:30→広河原の湯15:05→15:40湯沢出合い15:57→16:15案内看板16:21→16:41 ゲート前

 

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