草津白根の野湯

 2004年7月、群馬県草津白根の山腹にある野湯(香草温泉と常布の滝温泉)を、秘湯に入る会の会員Sさんと訪ねた。これはそのときの記録である。

第一日(晴)
 Sさんの車で草津に向かう。途中、右手に岩櫃山の岩峰が聳え登高欲をそそられる。道路は比較的空いていたので草津には10:00についた。道の駅のコンビニで食料の買い出し。大沢川を渡ったところに車を置いて昼食。大沢川に下りて沢水を口に含んでみたら、ここでも若干酸っぱかった。でも香草温泉のある毒水沢ほどではない。10:50出発。

 香草林道に崩れていた岩は大方片付けられていた。上部の火山灰の壁には網が張られていた。前回から3年経っているのでその間に工事したのだろう。常布の滝展望台までは舗装された自動車道なので11:05に着いた。展望台から常布の滝(写真02)を チョットだけ見て直ちに香草温泉に向かう。

       写真02(常布の滝:展望台より)

 常布の滝への分岐点は、以前は小さな木の杭だけだったが、シッカリした看板が立てられていた。これなら間違う事はない。ここから少し登りがキツクなる。一本松の道標を過ぎるとすぐに毒水沢との出合になる。沢の水は吐き出したくなるほど酸性が強い。毒水沢とは良く言ったものである。ここで15分の休憩を取り 12:00に出発。
 ゴーロが続いた後、小さな滑滝を気持ちよく乗り越えてゆく(写真08)。酸性が強いため浅い滝壷でも水が緑色に見えて美しい。苔も生えていないので岩も滑らず快適な沢登りだ。

      写真08(滑滝の連続する楽しい遡行)

 12:33大滝着。高さ15mほどで、この沢最大の滝である。左岸の壁を登り、身の丈ほどもある熊笹をかきわけてゆくと滝の上部に出た。
 大滝から上の沢は結構急である。沢筋は温泉成分で黄色くなっている。Sさんも山には慣れているらしく、若干遅いものの登り方に不安はない(写真12)。 いよいよ最初の源泉(No3、No4)が現れた。左岸の壁にあいた穴から温泉が流れ出し噴気も出ている。しかし湯を浴びるほどの湯だまりがないのでここは写真を撮っただけで素通り。

          写真 12(Sさんの登攀)

 更に急な沢筋を登ると、いよいよ目的のNo9源泉のある小滝が見えてきた。右岸の壁にはニョロニョロと折れ曲がった鉄筋が残っていた。多分、大昔、ここから常布の滝展望台にあった旅館まで引湯した跡だろう。
更に登り、小滝の左岸の壁下をみるとNo9源泉(香草温泉)は健在だった。13:28着。前回湯船を掘ったところは土砂で埋まり、その少し下に小振りの湯船が掘ってあった。現状は浅すぎるので2人でスコップで掘ってから交互に湯に入った。左側から熱い湯、右側から冷たい谷川の水が入るので常に掻き回していなければならない(写真16)。
 下界を見下ろすと、毒水沢の沢筋がずっと見渡せる。7月なので前回のように紅葉は見られない。しかし天上の野湯という感じはする。

        写真16(No9源泉に浸かる)

 Sさんは、少し下にある自然の湯だまりに入りに行った。少しぬるいが適当な深さと広さがあり快適だったとのこと。当方は、No9源泉の脇にある小滝の滝壷に入った。頭から滝の水を浴びるところまで行ったが滝壷も背が立つ程度だった(写真18)。この沢はあちこちから湯が湧き出しているらしく、滝の水もそんなに冷たくなかった。

       写真18(No9 源泉の小滝に浸かる)

 ゆっくり野湯を楽しんで、14:45香草温泉出発。沢が急なので下りもあまりスピードは出せない。上から見る滝壷はどれも緑色の水をたたえ綺麗だった。No3、No4源泉の噴気のある穴の中をキャップランプで照らしてみたら結構深い(写真20)。2mぐらい先で右に曲がっていたので全長はわからなかった。噴気がなければ入ってみるところだが。

      写真20(No2,3 源泉の噴気孔を調べる)

 また大滝の巻き道を下り、毒水沢出合に15:45着。いよいよここで香草温泉ともお別れだ。あとは立派な登山道を下るだけ。傾斜もそうキツクないので膝は笑わない。雲行きがややおかしくなってきた。天気予報は午後3時以降は「曇ところにより、にわか雨」となっていたが良く当たっている。
 常布の滝入口には16:20に着いた。時間的にギリギリの線なので常布の滝温泉に行くかどうか迷った。Sさんの年齢と東京から車を運転してきていることを考えて、今日はやめることにした。大沢で車を置いたところには16:35に着いた。Sさんはここから沢登り用の靴に履き替えて行ったので、登山道部分では足が締めつけられて痛かったとのこと。

 今日は草津で車中泊なので、たっぷり時間がある。有料の西ノ河原大露天風呂に入り、旅館街の食堂で夕食。グラススキー場の広い駐車場には車中泊の車が何台か並んでおり、トイレも使えるようになっていた。21:00頃には寝た。

 第二日目(晴)
 6:00 に起床。洗顔とトイレと朝食。6:55出発。昨日と同じ場所に車を止め、7:40に歩き始めた。常布の滝展望台を経て常布の滝入口から沢に下りる道に入った。道は良く踏まれていて朝露に濡れた熊笹も気にならない。滝に行くルートと温泉に行くルートの分岐点には道標があるが、手製の小さなものなので、知ってないと見落としがちだ。

 常布の滝温泉(写真21)についてみたら洞窟温泉の洞口に水が滝のように落ちていた。また、温泉の左側にも新たな流路が出来て水がザーザーと流れていた。沢の流れと言うものは常に変化するものだなと驚いた。

   写真21(常布の滝温泉:左側の洞窟状の部分)

 先般の大雨で大量の土砂が流れ込んだらしい。まず湯船の掘り起こしにかかった(写真24)。深さ20cm 程度だったものを深さ40cm程度まで掘り起こして湯に入った(写真26)。

     写真24(湯船を深くするため掘り起こす)

      写真26(掘り起こした湯船に浸かる)

 湯は鉄分泉独特の橙色。湯の湧き出し口では42℃だが湯船は33℃になっていた。大量の水が落ちているからだろう。それでも「いい湯だな」と横になり野湯を満喫する。洞口は水が容赦なく落ちてくるので、まるで水の簾がかかっているようだ。手作りの湯を満喫して常布の滝温泉を後にした。

 

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