妙義山(群馬)

 2009年10月、松井田8:23着。天気予報では晴れだったのだが、空は一面の曇り。幸い、山の頂は雲には隠れていない。屏風のようにそそり立つ白雲山が登攀意欲をそそる。相棒の車が到着するまで5分ほど待った。彼の車ですぐ妙義神社へ。道の駅で弁当を買おうと思ったらまだ今日の弁当は入荷していないと言う。昨日の弁当が2つほど残っていたのでそれを買う。道の駅は地元の物産品ばかりでコンビニ的商品は置いてないようだ。

    地図01 コース(中の岳~ホッキリ)

車で中の岳駐車場へ。50年前、高校の遠足で来たときはこのドライブウエイはなかった。中の岳駐車場から見る金洞山を中心とした岩山のオブジェは見事だ(写真02)。まさに人間を威嚇するかのように岩峰が所狭ましと聳え、上から覆いかぶさるようだ。轟岩が案外低いのに驚いた。50年前、あの岩の頂から中の岳神社を見下ろしたときは目もくらむほど高かったという思い出があるのだが。

      写真02 中の岳駐車場からみた妙義山の威容

 中の岳神社の急な石段を登り「見晴らし」に着いた。第四石門の東屋が見えるが石門は紅葉に隠れて見えない。写真を撮ってから中の岳西側の主稜のコルに向かう。「これより先危険、一般登山者は立ち入らないで下さい」の看板を見送って急な山道を登ると木立で覆われた主稜に出た。木立の間から鋭い岩峰が寄り集まった西岳が見える。
 ここから表妙義主稜縦走が始まる。緊張感が高まる。ゴムの滑り止めがついた軍手をはめる。いよいよ最初の鎖場、2段15mだ(写真04)。

    写真04  15mの鎖場に取り付く先客

 先客の2人組みが取り付いている。彼らが上の岩稜に消えるのを待って取り付く。足場も多く難なくクリアーして次へ。岩稜上から見下ろすと中の岳駐車場が真下に見える。高度感も増す。中の岳には20分ぐらいで着いた。通過してきた岩稜を振り返るとかなり痩せた岩尾根だ。その後ろに西岳が中の岳と同じぐらいの高さで聳えている。中の岳頂上には小さな祠があった。
 東岳までかなり痩せた岩稜を行くのだが、尾根にはブッシュが生えていて下が見えないのであまり緊張感はない。ただし一箇所だが、露岩の本当に痩せた岩稜を行くところがある(写真05)。

      写真05 痩せた岩稜をゆく(中の岳~東岳)

 ここはやや緊張。幸いトラ目ロープが張ってあるので落ちる心配はない。コケシのように突き出した岩柱をまいて露岩の岩稜も終了。東岳が「あんなところに登れるのかね」と言いたくなる様に突き出ている。でもなんとなく苦労もせず東岳頂上に着いた。

 いよいよここから先が表妙義最大の難所「鷹返し」だ。東岳頂上から見ると、鷹返しの頭が傾いたようにそびえている。慎重に痩せ尾根を進む。第四石門へのエスケープルートを右に見送る。入口の雰囲気を見ると、エスケープルートと言ってもかなり悪そうだ。右下に金鶏山と筆頭岩が聳えている。金鶏山に雲がかかり始めていた。直に主稜にも雲がかかるのではないかと心配。
 次に表妙義では二番目に難しいと言われている二段25mの鎖場だ。先行の2人パーティーがザイルを使って登っている。中段に登っている一人がベテランらしく、下にいる仲間をザイルで確保して、鎖を使わずに登る練習をしているようだ。おかげで結構時間がかかるので、下の仲間が中段に達したところで先に行かせてもらうことにした。
 ここは下段も上段も足場が少なくやや難しい。とくに上段の鎖は太く、重いので、思うように左右に動かせない。足場がないところでは腕力だけで鎖につかまり、足を岩場に垂直に立てて登る。なんとかクリアーして相棒に合図を送る。

        写真07 最大の難所:鷹返しの頭(人がいるに注意)

 稜線に出ると鷹返しの頭が眼前に聳えている(写真07)。頭の露岩にも立ち木がヒュロヒョロと生えている。標高が1000mぐらいしかないからだろう。鷹返しの頭は縦走路からちょっと外れているが、ブッシュを掻き分けて頂上まで行き敬意を表する。対面には相馬岳が穂高のジャンダルムのような形をして聳えている。その相馬岳にもすでに雲がかかってきた。急がねばなるまい。

 いよいよ最も難しいと言われている鷹返しの下りの鎖場だ。ここは「150mの絶壁の上なので下を見ないように」とガイドブックに注意書きのあったと ころだ。 まず最初は岩壁の上部を鎖につかまってトラバース。次に岩稜にかかった3連の鎖で下降する(写真 09)。今日のコースはこの鎖場が下りになる方向なので下を見ざるを得ないが、木が結構生えているので150mの絶壁と言う感じはない。岩稜なので傾斜も垂直ではない。想像していたよりは簡単に下ることができた。最後は鉄の梯子(写真10)。この場所にあわせて特別に作った鉄梯子らしく、無骨で頑丈な2.5mぐらいの梯子を何段にもつなぎ合わせたものだった。ここまで運び上げて設置するのも大変だったろう。

          写真09「鷹返し」の3連の鎖

      写真10「鷹返し」の鉄梯子

 ここだけでなく、表妙義の縦走路全体に、よくもまあ、たくさんの鎖を設置し足場も刻んでくれたものだ。地元の苦労に感謝しながらも、多くの墜落事故が起こっていることに「何故」という疑問も生じた。

 これから先はバラ尾根と呼ばれるナイフリッジの尾根だが、潅木が生い茂っているので怖くない。マチュピチュの奥に聳えるワイナピチュの登山道も相当急峻な岩壁に張り付いた階段だが、木が生い茂っているので怖くないのと同じだ。裏妙義の妙義湖に降りる女坂への分岐を左に見送り、地図で展望岩峰と書いてあるあたりで昼食。
 展望岩峰と言っても木が茂っているので眺めはあまり良くない。女坂の途中にローソクのような岩峰が聳えているのが見えた。女坂といえば通常はやさしい道を想像するが、ここの女坂は違うらしい。昼食後、ホッキリまで急な道を下る。
 相棒が「今日は土曜なので帰りの道路が渋滞するといけないので早めに下りたい」とのことなので、ホッキリから中間道へのエスケープルートを下る。中間道までかなり急な岩場の道を下る。12分ぐらいで中間道についた。

 中間道を中の岳神社の方向に向かう。中間道は平坦な道かと思っていたら、どうしてどうして、すごい登りの連続。高度計で測ったら、縦走路のコルである「ホッキリ」より高いところまで登っている。中間道となると一般ハイカーも多い。「鷹返し」下の大岩壁の根本をトラバースして、石門入口についた。ここから石門めぐりの道を下る。第四石門、第二石門、第一石門を経由して自動車道路に出た。駐車場には14:30についた。幸い雨には降られななかった。

(後記)
 妙義山から帰った後は、腿やふくらはぎが痛くなることはなかった。山は急峻とはいえ、標高差があまりなかったためだろう。その代わり、肩が少々痛くなっていた。腕力で鎖場を昇り降りしていたからだろう。今回回れなかった表妙義の白雲山~相馬岳は別の機会に訪れてみよう。

コースタイム
中の岳駐車場 9:05→9:35 見晴 9:40→コル 10: 05→10:18 中の岳 10:30→10:45 東岳 10:50→ 鷹返し 11:30→12:20 展望岩峰(昼食)12:50→ホ ッキリ 13:15→中間道 13:27→14:30 駐車場

 

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