2012年7月、大学同期と2人で早池峰山に登った。本当は6月中に行きたかったのだが、用事と天候がうまくマッチせず7月になってしまった。
第一日目(曇り)
東北道を進み、仙台を通過するあたりで、ねずみ色っぽいカモシカが中央分離帯を飛び越えて車のすぐ脇に飛び出してきたのには仰天した。運転している相棒が一瞬、ハンドルを左に切ったので衝突は免れた。その付近には「野生動物に注意」の看板もあることはあったが、こんな交通量の激しいところにカモシカが飛び出すとは。野生動物の移動経路だったのかも知れない。
花巻から東和で高速を降り、ナビにしたがって大迫へ。途中のスーパーで野菜などを買い、早池峰登山基地の「岳」についた。民宿がみな「○○坊」という名前になっていた。さすが信仰登山の山だけある。昔は宿坊だったのだろう。山は中腹から上が分厚い雲に覆われている。明日は、一瞬でもいいから晴れてもらいたいものだ。15:00ごろ、今日の泊まり場「うすゆき山荘」についた。
山荘は広い板の間で、寝る部分が二段になっている。全体で15人ぐらいは泊まれそうだ。 石油ストーブも揃っていて、石油もある程度保存してあった。水は小屋の前にゴムホースで引いてあり、恐ろしく冷たい水だ。トイレは小屋の横にあり、水洗ではないが全然くさくない。なかなかいい小屋だ。
今日下ってきたという3人連れが、小屋外で料理を作り酒で盛り上がっていた。本当は今日帰る予定だったが、食料も残っており、明日も休みなので、もう一泊することにしたとのこと。
我々は中に入って夕食の支度にかかった。夕食の支度といっても、お湯でカレーのパックとご飯のパックを暖め、かけて食べるだけ。相棒がスーパーで買ってきた野菜で生野菜サラダを作ってくれた。結構うまかった(写真01)。
写真01 うすゆき荘での炊事
20:30ごろには寝袋に入ったが、酔っ払った3人組がうるさかった。でも朝が早かったので、そのうち寝込んでしまった。
第二日目(曇り)
朝4:30には起き出して朝食の支度。カレーが牛丼に変わっただけで、作り方は全く同じ。それでも食事が終わったら5:30。急いで山登りの支度をして、うすゆき荘前5:46発のバスにやっと間に合った。バスが3台も来るほどの登山者の数だ。大多数の登山者は河原の坊で降りて登って行った。
我々は小田越まで行ってバスを降りた。小田越まで来た登山者は我々を含め4~5人だけだった(写真02)。
写真02 小田越バス停:携帯トイレ売り場
標高1200あるので、すでに霧の中。バス停前で携帯トイレを350円で売っていた。早池峰は「立小便、雉打ち」禁止で、必ず携帯トイレにして、それを持って下って、麓にある回収箱に入れなければならないとのこと。高山植物のお花畑を守るための措置だそうだ。
6:07、スパッツをつけて登山開始。最初は木道があるので歩きやすい。独特な切込みをつけた木道だ。じきに、岩石が累々と連なる山道となった。その周辺に小さな高山植物が、色とりどりに咲いている。もちろん名前は分からないが、片っ端から写真を撮る。あとで詳しい人に聞けばよい。
そのうち他の登山者から聞いて、エーデスワイスだけは分かった(写真03)。もっと極彩色の花かと思っていたが、地味な白い花だった。花というより、毛の生えた厚手の葉っぱが白くなった感じだった。
写真03 エーデルワイス(早池峰うすゆき草)
「エーデスワイス」とはドイツ語で「高貴な白」という意味だそうだ。日本では「うすゆき草」と呼ばれ、いくつか種類があるそうで、ここのうすゆき草は「早池峰うすゆき草」とのこと。
途中のお花畑に大きな鳥がいた。胸から上が 白地に黒のまだら模様であとは黒い鳥だ。雷鳥ではない。カラスに似ているが二本足で歩くのではなく、雀のようにピョンピョン飛んで歩いている。たまたま通りかかった物知りの登山者が「あれはごま烏だ」と教えてくれた。
一枚岩にかかる梯子場を登り(写真04)、剣ヶ峰の分岐に着いた8:10。登山口からの標高差は700m足らずなので特に疲れもない。
写真04 天狗のすべり岩の梯子
剣ヶ峰を往復するため、霧の中の尾根道を剣ヶ峰に向かう。ここから人があまり通っていないので両側の這松がおいかぶさり、腰から下が露で濡れるので、雨合羽をつけた。ゆるい下りの後、少し登って、9:08、剣ヶ峰についた。剣ヶ峰というほどヤセ尾根ではないが、晴れていれば眺めはよさそうだ(写真05)。
写真05 剣が峰山頂
帰りは尾根に咲く花をめでながら剣ヶ峰分岐に10:10に戻った。ここから早池峰頂上まではわずか。頂上の避難小屋には10:21に着いた。頂上にはかなりの人がいた(写真06)。弁当や、記念撮影や、三角点の確認や、尖った岩によじ登ったりしていた。
写真06 早池峰山頂
頂上の尖った岩はみな同じ方向に傾いていた。大きな造山運動が働いたようだ。ちょっと薄日が差してきたので、一瞬霧が晴れるかと期待したが、とうとう晴れなかった。頂上で我々も記念写真を撮った(写真07)。
写真07 頂上で記念撮影
トイレに行きたくなったので携帯トイレをも って、山頂小屋のトイレに行ったら、便座形をした椅子が置いてあるだけ。その中に携帯トイレを広げ、大も小もその中にして、携帯トイレのスポンジに吸い込ませ、携帯トイレのジッパーを閉じて、まだ生暖かいビニールの袋をもってトイレの外に出た。こんな経験は初めてだ。それをザックの中につめて下りにかかる。複雑な気分だ。
12:00、山頂小屋の登山指導員に河原の坊への降り口を聞いたら、「傾斜が急なので気をつけて下さいよ。大抵の人は河原の坊から登り、小田越に下るのですから」と注意された。なるほど大岩がゴロゴロした急な斜面が続く。おまけに鎖場まである(写真08)。
写真08 河原の坊コースの鎖場
これでは下りといえどもスピードは出せない。おまけに霧で濡れて岩が良くすべる。当方もあちこちに、打ち身・擦り傷を作った。コースが急なのでスピードが出せない。いつもなら下りは快調に小走りで下るのだが。
ここから先は沢に沿って、滑りやすい大石の上を下る。何回か滑って転び、手足をひどく打った。いくら下っても沢沿いの道が続く。いいかげんいやになった頃、河原の坊登山口についた(14:32)。ここに携帯トイレ回収箱があったので、気になっていた携帯トイレをすてた。しかしビニー
ル袋に入った汚物をどのように処理するのだろう。まさか人の手で分別するわけではあるまい。袋ごと燃やすのか。
うすゆき荘まで戻って荷物をまとめ、15:10に出発した。この後、東北の湯めぐりをして家に帰った。
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