ドイツのループ線(トリベルグ)

 Google Earthでドナウ川の水源を探していたら、ドイツ南部の黒い森鉄道の途中に大きなΩループが4つも連続しているところがあった(写真03全体)。どうやらトリベルグのΩループとして、鉄道オタクの間では有名なところらしい。鉄道会社もループ線に沿って見学用の遊歩道を整備し、集客に努めているとのこと。2013年8月、このΩループを見に出かけた。

前日(ストラスブール→トリベルグ)
 20:00 頃、ストラスブール駅に着いたら番線が26もあるのでびっくり。当方の乗るドイツのオッフェンブルグ行きはたった2両のかわいい電車だ(写真02)。

        写真02 たった2両のかわいい電車

 乗客は座席の半分がうずまるくらい乗っていた。もう20:18だというのにまだ夕日がさしている。発車してすぐ、フランスとドイツの国境を流れるライン川を渡った。ストラスブール名所の背の高いカテドラルも見えた。
 オッフェンブルグで21:07発のコンスタンツ行き地域急行に乗り換えて、今夜の目的地トリベルグに向かった。この列車は機関車牽引の客車だった。客車はがら空き。こんな時刻に山の中に向かう乗客はいないのだろう。

 もう日も暮れて景色も見えないので、オメガループ観察用に磁石と高度計を出してその指針をしっかりと見ていた(写真04)。最初に、南向きのΩループから北向きのΩループにかわるところ(写真03の黄色い四角部分)があるからだ。 写真の中の矢印は列車の進行方向を表している。

    図03 トリベルグの4重Ωループ

        写真04 磁石と高度計を置いて観察する

 最初の南から北に反転する180度のオメガループは高度計で50mほどの差があった。列車が南向きから完全に北向きになったところで、どういうわけか、磁石の針が逆向きに一回転した。次の北向きから南向きになるところでも同じような反応を示した。磁石(コンパス)は何故このような反応を示すのだろう。高度計だけは順調に高度を増して行った。

 定刻から5分ほど遅れて降車駅のトリベルグに着いた。駅前は真っ暗で、マイカーが何台か停まっていたが、タクシーは一台もない。タクシー会社の電話番号を調べてこなかったので、このときは途方にくれた。ホテルに電話したら、いまから迎えに行くとのこと。助かった。車で迎えに来たボーイにチップを弾んだ。
 ホテルは駅から一番近いところを選んだのだが結構離れていた。22:00ごろチェックイン。フロン トは感じのいいおじさんだった。指定された部屋に入ったら、広さもあり清潔だったが、バスではなくシャワーだった。一泊98ユーロなので当然バスだろうと思っていたのだが。
 シャワーを浴びてからホテルのバーに出かけたが、客同士の会話が弾むという雰囲気でもなかったので、ビール一本で出てきた。この辺は開発途上国と違う。今日は朝からたっぷり歩き回ったので疲れが出たのかすぐ眠りに落ちた。

トリベルグのΩループ遊歩道
 朝7時から朝食をとり、7:40、ホテルに荷物を預けて出発。空身でトリベルグのΩループ見学用遊歩道のハイキングに出かけた(図06)。

       図06 トリベルグの線路と遊歩道
 図06は図03のトリベルグ駅付近を拡大し、遊歩道を黄色で書き込んだものである。図06の水色の線が線路である。

 ホテルのあるトリベルグの町は駅から離れているので、S点に達するまで15分ほど歩いた。S点から自動車道路を下って行くと、今日の遊歩道で一番展望の良いポイント④の展望台が正面の山の上に見えてくる(写真08)。かなり急傾斜な斜面に突き出して設けられた展望台だ。

       写真 08 いちばん眺めの良い展望台が見える

 大きな時計があるので有名な土産物屋(写真10) に到着したがまだ閉まっていた。

        写真10 遊歩道入り口付近の土産物屋

 このあたり(ポイント②)で山に登る口があるはずだがなかなか見当たらない。ドイツ語が読めないので散々迷った挙句、それらしき看板(写真12)が立っているところを見つけた。その小径を登ったらすぐに本格的な道標が現れたので、これに間違いないと確信してそのルートを登った。

         写真12 遊歩道入り口にある看板

 道はよく踏まれており歩きやすかった。道端の石垣は苔が生えた古いものなので、遊歩道用に新たに作った道ではなく、既にある山仕事用の道をつなぎ合わせて利用しているのだろう。
 次の展望台(ポイント③)には8:43に着いた。ちょうど真下の線路を下り電車が走り抜けていっ た(写真14)。この展望台はトンネルの真上にあるらしい。このポイント③では、線路構造を勉強するのが課題らしく、本物の軌道の一部が展示されていた。 「こんなおまけはいらないよ」と言いたい感じだった。

         写真14 最初の展望台(ポイント③)

 ポイント④への道標は、前方右手の大木の影になっているので注意して探す必要がある。この道標に気がつかずまっすぐ登ってしまうと、舗装された林道に出てしまうので、すぐ戻ったほうが良い。遊歩道は急傾斜の山肌を水平にトラバースしてゆくので、登りはさほどきつくない。
ポイント④の展望台には9:03に着いた(写真16)。ここの展望台は岩の上に張り出した人工的なもので、床は網目になり、下の岩だらけの斜面が見下ろせる。

       写真16 斜面に突き出したポイント④の展望台

 正面下には入り口探しで迷ったポイント②の土産物屋が見下ろせる。その向こうにはひとつ手前の第二ループの線路も見える(写真18)。 左手はトリベルグ駅から第三ループを回って来る線路(写真20)、右手は第四のループを回って ポイント⑤に達する線路だ。すなわち、ここでは三方向の列車が見えるので、これから行く人はここでゆっくり時間を取るように計画すると良い。

      写真18 ポイント②の土産物屋と対岸のループ線

 残念ながら、当方が訪れたときは、三方向とも列車の姿が見えなかった。本格的な鉄道マニアならここで列車が来るまで待っているのだろうが、今日の午後はドナウエシンゲンで戦略鉄道に乗る予定があるので先を急ぐ。

       写真20 トリベルグ駅から来る第三ループ線
 ゆるい登りを登ってゆくと第四ループの線路の下をくぐるポイント⑤に着いた(9:12)(写真 22)。遊歩道案内書によると、このコンクリート製のガードの下で、近づいてくる列車のレール音を楽しむよう薦めている。

         写真22 ポイント⑤は線路下を通る

 コンクリート製の橋の下を潜り抜けたら線路のすぐ脇に手すりで囲まれた展望台が設置されていた。ちょうどトンネルの入り口部分にあたる(写真 24)。そのとき、すぐ脇を上り列車がかなりの スピードで通り抜けていったので、手すりが高い 理由が分かった。

       写真24 ポイント⑤の展望台は線路のすぐ脇

 ポイント⑤から先も緩やかな登りが続き、道も良く踏まれている。今までは稜線の陰に隠れていた太陽も、道を照らすようになってきた。
 じきにポイント⑥の看板が建っているところについた9:19。ここは何も展望が利かないが、列車の通過時刻の案内が貼ってあった(写真26)。

        写真26 列車の通過時刻表が張ってある

 なんだ「宝の持ち腐れだな」と思いながら先に進んだが、あとで地図を良く見たら、ポイント⑥のすぐ脇を第四ループの線路が走っていることに気がついた。よく探せば、近くに展望ポイントがあったのだろう。

 そのすぐ先でこの遊歩道の最高地点の牧草地に達した9:31。牧草地に沿って下るとポイント⑦ の標識が建ち、東屋風の休憩所も設けられている(写真28)。

          写真28 ポイント⑦の休み場所

 ここからは反対側斜面のトリベルグの町が良く見える。家並みは鉄道線路とは直角に山奥に向かって細長く伸びている(写真30)。この道を奥に進むとドナウ川の本当の水源に達する。

           写真30 トリベルグの町

 牧草地の持ち主と思われる農家の脇を通り、トリベルグに下る道に入る。写真 32の店を見下ろせる位置まで下ればトリベルグはすぐである。

        写真32 この店が見えてくれば駅は近い

 トリベルグ駅(写真34)には9:48に着いた。駅前には5動輪のSLの展示があり(写真36)、駅構内にはループ線の解説パネルが展示されてい る(写真38)。

            写真34 トリベルグ駅

        写真36 駅前には5動輪が展示されている

      写真38 駅構内にはループ線のパネル展示がある


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