瀧谷洞(埼玉県)

 2003年12月、当方の所属するケイビングクラブで奥秩父にある瀧谷洞の調査ケイビングを行った。今回はアメリカからケイブレンジャーをやっているブライアンも参加している。
この洞窟は横穴より竪穴部分の方が多いので難しいと評判の穴だ。しかもすでに積雪期で道中の困難も予想される。当方の技術でついて行けるかどうか不安だったが参加した。

 自動車で行ける出会いの丘に真夜中に着きテントで一泊。翌日10:00ごろ出会いの丘を出発。幸い天気は快晴だ。 瀧谷洞に行くためには豆焼沢に沿って、雪の中を2時間ほど登る必要がある。最初は沢より高みの山腹をトラバースしてゆき、小さな滝のあるところで沢を飛び越えなければならない(写真01)。
 夏なら簡単だが、今は水辺の岩に氷が張り付いていて、うっかり水辺に近づくと、滑って沢にドボンと落ちる。まずブライアンが上手に沢を飛び越えた。さすがプロだ。それをまねて次々と沢を渡った。

    写真01 先頭(左端)のブライアンの飛び方を見学

 12:30ごろ瀧谷洞下の河原に着いた。第一洞口から流れ出す水流の脇を登って、第二洞口のテント場所に着いた。この洞口は大きいので中でテントも張れる。日数がかかる調査や測量の 場合はここでテント泊して、往復の時間を節約している。
 ここで最後の身支度を整え、第三洞口までの45°の岩壁に張られたロープにつかまって登ってゆく(写真02)。ロープに薄い氷が張り付き恐ろしく滑る。洞口に達するまでに度肝を抜かれてしまった。

 写真02 第三洞口へはロープにつかまって登る

 第三洞口はやっと人一人が通れるほどの狭さである。狭い通路を進むとすぐに大広間に到着。大広間と言われるだけあって、高さ30m、直径も50mぐらいある。床は天井が崩落した岩石でうずまっている。その左奥のあたりから、下に降りる隙間があり、第一洞口につながっている。

 この大広間に初めて到達した仲間も今回参加している。彼によれば、第一洞口から入って、下からこの隙間を登ってきたら広い空間に出たので、ここが未知の新しい洞口で、外界はもう夜なのだと思ったそうである。しかし時計を見るとまだ明るい時間なので、ここが、とてつもなく大きな空間であることが分かったとのこと。

 隙間を下ったところは小さなホールで、そこから下にチムニーが続いている。チムニーの幅は1mぐらいなので、ロープを使わず、手足を岩に突っ張ってチムニーを下ってゆく(写真03)。 このテクニックを通称、チムニーと呼んでいるが、ロープをセットする必要がないので、より早く行動できる。

        写真03 竪穴をチムニーで下る

このチムニーを下りきると、第一洞口から流れ出している洞内河川の上に達する。奥へ行くには、その川の上を、両岸に足を踏ん張って移動して行かなければならない(写真04)。

 写真04 川の上を両岸に足を踏ん張って進む

 両岸の壁の間隔が広いので、当方の短いコンパスでは届かない。どうしても行たければ川の水の中を進むしかない。深さも分からないうえ、冬の寒い時期に水に浸かって歩くのは御免こうむりたい。

 仕方なく、「当方はここで待機する」とリーダ ーへの伝言を頼み、若者たちが奥へ進んでゆくのを、指をくわえて見ているだけになった。情 けない。全員が奥に消えてしまうと、真っ暗闇 と水の流れる音だけが残った。電池の消耗を避けるため、キャップランプを消して待機。

 1時間半ほどで仲間が戻ってきたが、奥には写真05のような素晴らしい光景が広がっていたとのこと。

      写真05 垂直な壁を登る

この壁は当方の技術ではとても登れない。瀧谷洞は当方の手出しできる穴ではないことが分かった。


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