パリは石灰岩の上に築かれた都市だということは意外と知られていない。パリが大きくなるに従って建築資材としての石灰岩の需要が多くなり、地下から石灰岩を掘り出して都市を建設していったので、パリの地下は空洞だらけになっている。今は補強して崩落しないようにしているが1900年代初頭まではかなり頻繁に、上に建っている住宅もろとも空洞の天井が崩落していたそうである。
カタコンブ・ド・パリ
パリ14区に長さ1.7kmに及ぶカタコンブがあるが、これも元は石灰岩を採掘した坑道の跡である。そこにパリ中の教会の地下にあった骨を移設したので、今では巨大カタコンブとして有名になってしまった。
GoogleEarthから取った市街地の映像とカタコンブの通路を重ね合わせると写真01のようになる。
写真01 カタコンブと市街地の関係
当方は石灰岩の採掘跡の坑道がどうなっているかに興味があったので、説明員のつくツアーの時刻(10:00)にあわせて行ったのだが、すでに長蛇の列。カタコンブがこんなに人気のあるスポットだとは思わなかった。係員に聞いたら2時間半待ちとのことなので、あきらめてモンマルトルに向かった。
モンマルトルの石灰洞窟
モンマルトルもすごい人出だったが、人込みとは無縁の丘の側面を丹念にのぞいて行った。狙い違わず洞窟の入り口が現れた(写真02)。
写真02 モンマルトルの洞窟
残念ながら入り口に柵があり立入り禁止。洞窟の入り口は石灰岩を積み上げて入れないようにしてあった。この付近は何度も石灰岩採取跡の空洞が陥没し、大きな事故を起こしてきたところである。その付近の石灰岩の岩肌が出ているところを全て見て回ったら写真04
のように、入り口は石灰岩を積み上げて埋めてあるが、中に入れるよう扉がついている洞窟もあった。ただし手前に柵があり一般人は立ち入り禁止である。
写真04 扉がついて中に入れる洞窟
ビュット・ショーモン公園
パリ北東部の19区にある最も大規模に石灰岩を採掘した跡が公園(25ha)になっている。2015年11月に起きたテロ事件の現場に比較的近い。公園中央に大きな池があり、その中に高さ30mほどの島がある(写真06)。
写真06 ビュット・ショーモン公園の中之島
頂上には西洋風の東屋がありそこから下に降りる洞窟があるが、鉄格子で塞いであり中には入れない。洞窟の壁を見ると石灰岩のブロックをコンクリートで張り合わせた人工の洞窟であることが分かる。
その中之島の後ろには、高い石灰岩の崖に高さ20mほどの洞口が2つあり、通り抜けできるようになっている(写真08)。
写真08 鍾乳洞は高さ20mの堂々たるもの
内部には鍾乳石も垂れ、滝まで落ちている。おまけに天井には外界に通じる竪穴まで設けて、鍾乳洞の雰囲気を十分に再現しているので、初めは本物の洞窟だと思ってしまった(写真10)。よほど洞窟に詳しい者が設計したのだろう。
ところが、洞窟内の壁面を見ると、厚さ30cmほどの石灰岩を積み重ねた人造洞窟だった(写真12)。滝を流れ落ちている水は下水らしく流路には泡が浮いていた。
写真10 天井から下がる巨大鍾乳石
写真12 鍾乳洞は人造
人造洞窟だとしても天井や鍾乳石が落ちてこないようにする仕組みはどうなっているのだろう。洞窟に興味があるなら、パリに行ったら一見の価値がある公園である。
参考文献:パリ地下都市の歴史
Gunter Liechr, Oliver Fay 著、古川まり訳 東洋書林発行
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