子供語録

 我が家には子供が三人いる。上から順に長男、長女、次女である。いつのころからか子供が傑作なことを言うと「子供語録」なる小冊子に書きとめておいた。今になってそれを読み返すと、子供が成長し、自分がもうろくしてゆくのが鮮明に浮かび上がってくる。

・長女(二歳)、お母さんが長女を膝に抱いて目薬を入れるため
「はい、(目を)パチパチして」と言ったら、手をパチパチたたいた。

・次女(三歳)「お母さんの手、白まっくろけだね」
   お母さんに粘土細工を手伝ってもらっていて。 

・次女(四歳)「この坂、重いね」
   近所の地獄坂と呼ばれる急坂を登っていて。

・長男(七歳)「そんごくうという漢字書けるよ。そん国゛」
   「こく」に濁点をつけて「ごく」と読むのだそうである。

子供同士の会話
・長男(八歳)「おまえは女の子?」
・次女(四歳)「そうよ、知らなかった?」
   妹をからかったつもりが、スルリと体をかわされて、兄貴形無しというところか。

・長女(七歳)「今日は電車とバスの博物館発行に行きました」
   東急の「電車とバスの博物館」に連れて行った日に学校に出す作文を書いた。
   博物館でもらった切符に「電車とバスの博物館発行」と印刷されていたため。

・次女(五歳)「さっき雨が大勢降ふっていたよ」

 お父さん(当方)と次女の会話
・お父さん「なんだ犬が馬車を引っ張っているのか」
・次女(八歳)「シーッ、お母さんが作ったんだよ」
   夏休みの家族旅行で乗った馬車を、次女の夏休みの宿題として作ったとき。
   次女がギブアップしたのでお母さんが代わりに粘土で作ってあげたとのこと。
   馬にしては足と首が短すぎた。

・長女(八歳)「欲しいものはないの。お母さん、サンタさんに適当に頼んでおいて」

・次女(六歳)「猫の目は昼は細いけど、夜はスイカの種みたいのが入っているね」

・長男(九歳)「ミーに一番近いから窓側でいいよ」
   皆で可愛がっていた猫(ミー)が交通事故で死んだ日。
   猫を庭に埋めたので、夜寝るとき女の子たちは窓側に寝るのを怖がったため。

母と子の会話
・お母さん「そんなに歯をこわす子、みたことないね」
・長女(九歳)「それが自分の子だとはね」
   長女が学校の帰りに犬に追いかけられて転び、前歯を折ったときの会話。
   前にも学校の階段で転んで歯を折っている。

・次女(七歳)「おかえんなさい。はい手ぬぐい」
   お父さんが土砂降りの中を濡れて帰ってきたとき。ここまで気づくようになったか。

・次女(八歳)「お父さん、ガム買うから百円ちょうだい。消費税は自分で出すから」
   交渉がうまいね。商売やらせたら成功するかも。

・長男(十六歳)「おやじは2倍速」
   親父はのろい。2倍速でとったビデオを、標準で見ているようだ。

・長女(十四歳)「悪夢じゃー」
   お父さんがブレザーにザックを背負って、腰に手ぬぐいをぶら下げて、山に出かけようとしたとき。
   そんな姿を友達に見られたら恥ずかしい。

・長男(十七歳)「俺は居眠りなんかしたことないよ。起きていても分からないけど」
   食事のとき、会社や学校で居眠りをすることがあるか話題となった。

・当方「ユキは防老犬です」
   飼い犬を連れておばあちゃんと一緒に初詣に行ったとき、「その犬は何犬?」と聞かれたので。

・長女(十七歳)「お父さんって、電車の窓から外を見てしゃべっているみたい」
   その場と全然関係ない自分の好きな話を突然出す。年寄りになった証拠か。

 

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