東北野湯めぐり2002年

2002年10月に秘湯に入る会の会員さんの車で東北の野湯めぐりをした。どこに泊まってどういう経路で走ったかあまり定かでないが、写真を見ながら当時の記憶をたどって2019年に書き起こしたものである。

夜行で東北自動車道を走って、最初は岩手県の滝の上温泉に行った。崖を下って滝つぼに着いたら、滝つぼは冷たかったが、滝つぼを囲む岩壁のあちこちから温泉の湯気が立ち昇っている(写真01)。岩盤に体を押し当てると温かみが伝わってくる。立ったままの岩盤浴を楽しむ(写真02)。滝の上温泉の裏山からは盛んに蒸気が立ち昇っている(写真03)。

写真01 滝ノ上温泉:「鳥越の滝」の滝つぼを囲む岩盤からの噴気

     写真02 滝つぼを囲む岩盤で岩盤浴を楽しむ

    写真03 滝ノ上温泉の裏山から噴き上げる噴気

どういうルートで迂回したか覚えていないが、次は安比温泉の野湯を回った。即席の塩ビのパイプから壊れかかったバスタブに湯が注がれている(写真04)。まわりは紅葉がきれいだ。この日はどこに泊まったか覚えていない。

         写真04 安比高原の野湯

次は秋田の湯沢から入って、途中で稲庭うどんを食べ、泥湯経由で河原毛に行き、上の駐車場に車を止めて、川原毛地獄(写真05)を堪能してから湯滝に下った。下の駐車場には、地獄を供養する仏塔もあった。そのすぐ下の川は川原毛地獄から湧き出すお湯で湯滝より温度が高いらしく、気持ちよさそうに川湯している人もいた(写真06)。

        写真05 川原毛地獄の最上部

    写真06 下の駐車場付近の川湯で楽しむ人もいる

いよいよ湯滝に着いた。もう10月下旬なので薄暗くなっており、シャッタースピードが遅くなったせいか、あまりピントの合った写真は撮れなかった(写真07)。近くの更衣室で水泳パンツになり滝つぼ温泉に入ったが、滝のしぶきが目に入るとすごく痛い。10月では滝つぼ温泉もぬるかった。滝つぼから出るとゾクゾクするほど寒い。ここは真夏にくるべきだ。

         写真07 河原毛地獄の湯滝

山道をセッセと登り返す。下の駐車場に行くまでの間の山道に菊花石(写真08)が現れていた。これは大事にしたいものだ。(2016年に行ったときは、この菊花石は無くなっていた。湯沢市役所にメールで問い合わせてみたが、役所自体が菊花石があることを知らなかった。誰か不心得者が採取してしまったのだろう。)この日は無理して秋の宮温泉まで飛ばし、秋の宮温泉湯ノ岱の「鷹の湯」に泊まった。

      写真08 河原毛:湯滝山道にある菊花石

翌日は秋の宮博物館(写真09)を訪問した。まず目的の、博物館自慢の凝灰岩を掘りこんだ風呂(10)に入れてもらった。まったりとした、いい湯だった。建物の中は個人の収集品(こけし、古い映画のポスターなどなど)が所狭しと並んでいた(写真11)

写真09 秋の宮博物館(元:旅館or民宿)

      写真10 秋の宮博物館の名物風呂

      写真11 秋の宮博物館の収集品(こけし)

鷹の湯に戻り、河原の湯(写真12)、屋内の底の深い湯、などを梯子する。

         写真12 鷹の湯の「河原の湯」

各部屋の洗面所のお湯は温泉そのものが使われており、蛇口に湯の華がこびりついていた。これを適当な間隔で掃除するのも大変だろう。廊下には、当旅館の軒下に作られたツバメの巣に集まるツバメ一家の写真が飾ってあった。白い燕がいるのに驚いた(写真13)。

      写真13 燕一家の中には白い燕もいた

翌日は仙秋サンラインを通って鬼首に抜け、宮沢温泉から荒湯地獄に行った。荒湯地獄で湧き出した熱湯がこの谷間(写真14)を流れる間に適温になり、下流では野湯が楽しめる(写真15)。ここでたっぷり時間を潰した。

 写真14 荒湯地獄で湧き出した湯はこの溝を通って流れ下る

  写真15 流れ下って温度が下がったところで野湯ができる

次は鳴子温泉郷の川原にある河原の湯(写真16)に入ったが、湯をかき回すと黄色いブツブツが浮かび上がってきて、何とも気持ち悪い。これは野湯ではなく、各旅館の排湯が河原にしみ出しているのではないか。怪しいので早めに切り上げて中山平に向かった。

  写真16 鳴子温泉下の川原で野湯する(旅館の排湯かも?)

野湯ではないが、中山平の東蛇の湯という湯治場に行った。建物は湯治場らしい湯治場という感じだった(写真17)。お目当ての湯は「温度を下げている最中で入れません」との立札が建っていた。川に面した細長い露天風呂(写真18)に入った。ここで湯を何杯もかぶり体をきれいに洗った。

         写真17 中山平の東蛇の湯

      写真18 東蛇の湯の川に面した露天風呂

それから奥羽線沿いに出て一路南下し、西吾妻山北麓の山の湯、大平温泉をめざす。大平温泉は標高1050mまで登るので、山の中に入るときわどいヘアピンカーブやスイッチバックがあった。温泉宿よりも170mも高いところの駐車場に車を置いて、延々とつづら折りの坂道を下る。荷物だけは宿の係員がケーブルで宿(写真19)まで運んでくれる。

           写真19 大平温泉

宿の周囲は屹立する山や岩壁に囲まれている。この仕切りの向こうは女性の露天風呂である(写真20)。男性の露天風呂は囲いがなく川に面しているので風情満点である(写真21)。この宿の夕食は広間に全員集まって、高足膳を横につなげで食べるので、知らない人とも話が弾む。

写真20 大平温泉:周囲は屹立する山(女性用露天風呂)

     写真21 大平温泉:風情満点な露天風呂

翌朝は早く起きて朝飯前に火焔の滝まで、歩きにくい谷を一往復した。荷をケーブルに預け、つづら折りの道を黙々と登って自動車へ。まず白布温泉の西屋(写真22)でひと風呂浴び、西磐梯スカイバレーを通って沼尻元湯で仕上げの野湯を楽しもうという計画だ。

          写真22 白布温泉の西屋

沼尻温泉のスキー場に付けられた自動車道を登って、硫黄川入口手前の駐車場に車を止める。硫黄川は急斜面のはるか下を流れている。急斜面につけられた山道には沼尻温泉に引く湯のパイプ(湯送管)が設置されているので、これを踏まないように歩く。やがて高さ50mの白糸の滝(写真23)が自分より下に見えてくる。それほど谷が深いのだ。

 写真23 沼尻元湯:硫黄川にかかる白糸の滝

白糸の滝を過ぎて右手の壁を注意してみてゆくと坑道が掘られている。昔々、沼尻が硫黄鉱山だったころは、この坑道にトロッコを走らせて運び出していたようだ。川が山道の右側を流れるようになったら、川の温度も暖かくなっている。適当な場所を見つけて、川湯を楽しむことができる(写真24)。

      写真24 沼尻元湯:川がどこでも温泉

これで全メニュー終わったので、あとは東京まで黙々と走るだけ。

 

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