相模の大凧上げ

 2018年5月、相模川の河川敷で行われる「相模の大凧祭り」を見に行った。天気は上々だが風がちょっと強すぎるかなという感じだった。小田急の相武台前駅で降りて、米軍座間キャンプ前を通り、住宅地の中を歩いて行ったら、「左、座間大凧祭り会場」いう看板と「右、相模大凧祭り」という看板が出ているので面食らった(写真02)。どっちに行けばいいの。その先で道案内に立っている地元の人に聞いたら、座間市と相模原市の会場があるのであのような看板になったとのこと。座間市の会場が下流側なので左、相模原市の会場が上流側なので右になるのだそうだ。複数個所で大凧祭りをやっているとは知らなかった。

    写真02 事情を知らない人が面食らう案内

 とりあえず地図で調べてきた道順に沿って左へ曲がる。農地の中の一本道を歩いていたら、花火の音が聞こえ、青空に花火が上がった(写真04)。その後ろには青空を背景にして丹沢山塊の峰々が連なっている。後でパンフレットを見たら、この花火は秋田県大仙市の友情出演による「昼花火」とのこと。

        写真04 丹沢山塊と昼花火

 最初に着いた会場は座間市の会場だった。そこでは大凧を上げる準備をしていた(写真06)。しかし、数年前の相模川踏破で見た会場とは違う感じだ。そのときは3月下旬だったので、凧の骨組みだけが置いてあった。ずいぶん大きな凧だなーと思った記憶があるので見に来たわけだ。しかし、座間会場はそのときの記憶と一致しない。

        写真06 座間会場の大凧

 ひとつ上流の凧あげ会場に移動してパンフレットをもらったら、下流から座間、新戸(しんど)、勝坂、下磯部、上磯部の5会場あることが分かった。座間会場以外は全部相模原市に属するらしい。ここ新戸の会場が、相模川踏破のとき大凧を見かけた会場だった。各会場の配置図は写真08のとおり。

               写真08 各会場の配置(右:上流)

 大凧祭りは座間市・相模原市の地元住民が、もう100年以上前から行っている凧あげ祭りで、国の無形民俗文化財にも指定されているとのこと。それぞれの会場で上げる凧の大きさも異なる。凧の一辺の大きさで表すと、座間(7間)、新戸(8間)、勝坂(5.5間)、下磯部(6間)、上磯部(6間)とのこと。新戸の凧が一番大きいのでここで見ることにした。

 各会場は相模川の河川敷に配置されていて、大凧を上げる位置の横の堤防は立ち止まって見物するのは禁止されている。凧が落ちたとき危険だからとのこと。その代わり、新戸会場では、凧あげ広場の下流側の芝生で見物できるようになっている。家族連れが、テントを張ったり、イスを持ち込んだりして、思い思いのスタイルで見物している(写真10)。大凧の骨はこんなに太い(写真11)。

        写真10 新戸会場の観客席

          写真11 大凧の骨

 いよいよ大凧を上げる時刻となった。風はやや強すぎるが予定通り上げると放送があった。大凧の下に30人ほどが入り、所定地点まで移動させる(写真12)。風向を見て凧の置き方も調整する。凧の引綱に絡まりはないか点検する(写真14)。メインの引綱にはこれだけの人が張り付いている(写真16)。

    写真12 大凧を所定位置まで移動させる

   写真14 凧の引綱に絡まりはないか点検する

写真16 メインの引綱にはこれだけの人が張り付いている

 いよいよ凧の下に人が入り、風上側の端を持ち上げて風を入れる(写真18)。風を受けて凧がだんだん立ち上がってくる(写真20)。次の瞬間、凧の上半分が折れてしまった(写真22)。マイクからは○○のロープを引いて、とかなんとか指令が飛んでいたが、間に合わなかったようだ。8間凧となると上げ手もかなり熟練を要することが分かった。

   写真18 凧の風上側の端を持ち上げて風を入れる

    写真20 風を受けて凧が立ち上がってくる

     写真22 次の瞬間凧が折れてしまった

 写真22のように折れ曲がると竹の骨も折れてしまう。凧の点検と修理に時間がかかるので、凧上げ広場に見物客も入っていいとのこと。見に行ったら、凧の縁の骨が完全に折れていた(写真24)。そのほかにも多数骨折れや紙の破れがあるらしく、凧の上に目利きが乗って点検していた。修理の仕方は添え木(竹)を当てて綱で縛るというもの(写真26)。

       写真24 青竹の方が折れた箇所

   写真26 折れた箇所に添え木(竹)をあて、縄で縛る

 修理している間、ピンチヒッターとして4間凧を上げるとのこと。4間凧はすんなり上がった(写真29)。凧のメインの引綱の引き方は地面に押し付ける方式で、意識的に綱を引っ張ることはしないようだ。凧を下すときは、引き手の最後部3人が順次前に出て、引綱を地面に押し付けてゆく(写真30)。こうしてメインの引綱の長さを短くして凧の高度を下げてゆく。凧の尻尾が地面に届くと、待ち構えていた引き手が凧の尻尾をつかみ、凧の揺れを止めながら着地させる(写真32)。写真が小さすぎるのではっきり見えないが、凧の尻尾(ロープ)の端を右側の3人がしっかりつかんでいる。

       写真29 青空に高く上がった4間凧

写真30 4間凧の引綱の押さえ方:凧を下すときは最後尾の3人が前へ出て、綱を地面に押し付ける

写真32 凧の尻尾をつかみ、凧の動揺を抑えながら着地させる

 いよいよ8間凧の修理も終わり再度上げるとの放送があった。今度はすんなり上がったようだ(写真36)。大凧がぐんぐん上がってゆく(写真38)が、よく見ると凧の下辺の骨が折れている。このため揚力が十分でないのか、すぐ落ちてしまった。それをぼうぜんと見つめる引き手(写真40)。こんな中で引き手にけが人がでたらしく救急車が駆けつけてきた。

   写真36 8間凧も、今度はスンナリ上がったようだ

写真38 しかし凧の下縁の竹が折れているようだ浮力が付かず、直後に墜落

写真40 呆然と見つめる引き手(この少し後部あたりでけが人が出た)

 帰りがけに座間会場で7間の大凧上げを見たが、こちらも失敗していた。大凧上げがこんなに難しいものだとは知らなかった。今日は風が強すぎたのだろう。

 

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