御殿場線と小田急は松田で立体交差しているが、先に建設された御殿場線が上で後から建設された小田急が下を通っている。前々から不思議に思っていたので、2018年4月に現地に調べに行ってきた。
結論を先に言えば、松田駅の南500mほどのところに川音川という暴れ川があり、その堤防を乗り越えるため、御殿場線は一駅手前の相模金子から築堤を築いて松田に到達する構造とした。このため小田急を通すとき、この築堤の上をさらに高架で乗り越えることも考えたが、当時の技術では無理であり金もかかるので、築堤を削りガードにして、その下を通すことにした。このため後から建設された小田急が下を通っているという、珍しい立体交差となった。
まず、立体交差周辺の衛星写真(GoogleEarthを利用)を図00に示す。
写真00 松田の南を暴れ川の川音川が東(右)から西(左)に流れている。この川の堤防を乗り越えるため、御殿場線は築堤の上を走る構造で建設された。
御殿場線の築堤構造を模式的に表したものが図02である。
図02 相模金子を出発してしばらくすると線路は築堤で徐々に登ってゆく。川音川の堤防を乗り越え、松田まで築堤上を進む。松田駅は途中から地盤が高くなるので、築堤を下げることなくこの高さで建設したものと思われる。
写真03は川音川を渡る御殿場線の鉄橋である。前方は松田方。川は右から左に流れている。堤防は思ったほど髙くはない。今は単線だが、大昔、東海道線だったころは複線だった。戦時中に片側線路を外して軍部に供出したので今は単線である。従って、この鉄橋の橋脚は上流側(右手側)が半分空いている。
写真03 川音川の御殿場線橋梁(前方:松田方)
川音川の堤防から松田に続く築堤の高さはこの程度のものである(写真04)。これで下を電車が通れるか疑わしい。念のため御殿場線の線路標識に気を付けていったら、うまい具合に線路の勾配標があった(写真06)。松田に向かって0.8‰の登り勾配である。ほとんど水平と言ってよい。写真04 川音川の堤防から松田に続く御殿場線の築堤
写真06 御殿場線の線路の勾配標
いよいよ松田も近くなり、小田急との交差の75m手前にある道路のガードをつぶさに見た(写真08)。位置は写真00で黄線が引いてあるところである。自動車用のガードにも拘わらず、ガード下を掘り下げてU字型の形状にしてあった。自動車でも掘り下げているくらいなら、電車ではなおさら深く掘り下げてあるだろうと推量しながら、本番のガードへと向かった。
写真08 自動車道路のガードでも、ガード下を掘り下げてあった
いよいよ御殿場線と小田急の立体交差のガードについた。位置は写真00で赤線が引いてあるところである。まず線路の勾配をつぶさに観察する(写真09)。前方(上り方)からかなりの勾配で下ってきているが、すぐ新松田駅構内に入り線路は水平になっている。新松田駅があるので線形をU字型にはしていないが、元の地盤より深く掘り下げたのだろう。この写真でも線路右側には若干の法面が見える。言い換えれば新松田駅構内は自然地盤より掘り下げて造成したことが分かる。
写真09 御殿場線の下を通る小田急の軌道。U字型に掘り下げたという感じはしない。
そこへ下り電車が入ってきたのでガードとの隙間がわかるよう写真を撮った(写真10)。案の定、ガードとの隙間が少ないので、パンタグラフが制限いっぱいまで押し下げられている。
写真10 ガード下を通過する小田急下り電車(パンタグラフが押し下げられている)
このあとは松田駅を一回りして、自然地盤がどこで線路面と一致するか観察して帰ってきた。
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